ATEGAU アテガウ@peace【生まれて、消えてゆく時間と音楽】

今一番ビシッとくるギタリスト「岡本望里」の所属するバンド「sleey dogg」

実はまだ会うのは5回目だったりするギタリスト。ライブとスタジオでしか会ったことない「大きな小学生」のような彼女のギターが本当に好き。
感情的でもあり、絵画的でもあり。
彼女は好きに弾いてるだけなんだろうけど、目の前が七色にキラキラするくらいシンクロする。

誰かのいいギターを聞くたび「くやしー!俺もやりたい!」なんていう気持ちになるんだけど、望里のギターは全然そんな気が起きない。
彼女がギターを弾いてると、自分がギターになったかのような幸福感に包まれる。

 

アテガウ:即興音楽と創造と作業音の美しさ

吊られたがいこつ
そいつを丸く囲んだギター、ベース、キーボード、ドラム、ドリル、ミシン。
もう、気分が高まる。
DJが埋めてく音が気持ちいい。

床に散らばったデニム素材。楽器とドリルとミシン

 

キーボードが静かになり始める。
無音と音楽をつなぐ。
重なっていくギター。
音のエッジが、空間に消えていくのが見えるようだ。小さな粒になる瞬間がまぶたに広がる。

センターに女の子が一人。
マスクをかぶった工作人が、デニムパーツを拾い上げ、ミシンをかける。
穴を開けて、複雑におり、またミシンをかける。
トンカチでとんとんとん。
ミシンでジジジジジ。

作業音は音楽だ。
生きてる人間の作り出すアナログビート。

秘密の作業場。重ねられる音。脱がされる心。

 

 

即興音楽を勉強して、音を広げることを覚えた。
和音にそった音楽や、展開の退屈な音楽はつまらないと思っていた。
そうやって知識を重ね、経験を重ね、逆に自分にとらわれていってる。
「こんなのは即興じゃない」とか「予定調和」だとか。

歳をとってよくないことの筆頭「経験から未来を決めつける」が作動してしまっていた。
そのくだらないよどみを、この会場、このバンド、この工作人が吹きはらってくれる。

 

気持ちのいい音だけが必要なんだよ。サニーさん。

 

そう言われているような気持ち(笑)

ああ、そうなんだ。
画学生だった頃、とにかく面白いことを探して回っていた。
五感のすべてを使って感じてた。
いつも何かを壊しては、造ろうとしてた。
そんな清々しい気持ちを思い出させてくれる音と空間。
ありがたい。
細胞が蘇るようだ。

 

アテガウ:いくつもの波が生まれては消える。積み重なる残響とデニム

キーボードが進路を決めて、それに乗っかっていくギター。
発光する虫のようなボーカル。
エンジンをふかすベース。
場面を切り替えるドラム。

時間をさかのぼる旅のようだ。会場のみんなは乗組員。
氷河を越えたり、青空を仰いだり、風に吹かれたり、ウトウトしたりする。

池松壮亮のような少年が言葉を発する。
美しいビートがこんがらがったり転げたりしながら加速する。
気持ちのいい言葉。ビート。
天国があるとしたらこんな場所がいいな。

女の子はデニムに包まれていく。布は立体。人を包んで泳がせる。

 

 

旅は終わる。
音楽は止む。
そこにいた人だけが記憶を持つことができる。

写真や動画は思い出を記録するが、ただそれだけだ。

生まれて消えていく音楽は、その場にいた人の細胞膜に入り込み記憶となる。
記憶はそれぞれ持ち帰られ、その人の血や肉や骨になる。
その人のガイコツになる。

暗い会場を照らすスクリーンの光

去っていく

 

 

アテガウ:創ることの楽しみは太古からずっと

何もないところから創る。
音楽家やものづくりをする人たちは錬金術士だ。
それぞれの呪文といけにえで、何者かを作り出す。

アンテナを張りさえしていれば、僕らはそれを見ることもできるし
創ることもできる。

うまいとか、理にかなってるとか、つまらないことだ。
だって魔術は人それぞれだもの。

2017.5.6にpeaceというライブハウスで行われた「ATEGAU アテガウ」
美しいものを造ろうとするビートと
美しいものを照らす光と
醜いものを埋め尽くす暗闇と。

ただただ、気持ちの良さだけで、船を進める。
それでいいんだ。

自分の気持ち良さに乗っかって、自分なりの呪文といけにえで、船を進めよう。

 

 

このところ悩みでぐずぐずだった心が一気に復活した。
ミサト!ありがとう。

 

君のギターの音が、入ってきたよ。





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