蜜のあわれ:感想【二階堂ふみの丸いお尻からはじまる完璧な妄想映画】ああ。可愛く楽しく可笑しく。

蜜のあわれ:ああ、こんなにも幸せに満たされたことは

エンドロールが流れ終わり、「完」という文字が。
ああ、こんなに満たされた映画は、どのくらいぶり?

感動したとか、泣けたとかではなくて「満たされた」

暗い部屋に映し出される極彩色の夢。映画の素晴らしさはそこにつきる。
過不足ない音楽や、貫禄のベテランとすがすがしい新人の役者がそこにいて、意思を持った監督が腕をふるう。たった二時間が、その日一日をウキウキさせる。

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二階堂ふみ:おとこ食いのミューズ。

それにしてもまだ二十歳そこそこの丸顔の女優に、こんなにも世界はひれふすのか?
「この国の空」という映画でも口語でない台詞回しがなんのイヤミにも不安感もなくかたられていたけど、この「蜜のあわれ」でも時代考証やリアリティも関係なく、薫り高き日本語が二階堂ふみの口から出たとたんに圧倒的に世界を作り上げていた。

口げんかで大暴れのシーンの、きらびやかなことといったら!

 

金魚そのもののクルクルとした目。まるいおしり。尾びれの恍惚感。どれも「この映画をつれてかえりたい」と思わせるんだけど、あの金魚ダンスのかわいさときたら!もう反則だ。

明治の文学の映画化。しかもその頃の言葉で。
すごい賭けだとおもう。すこし間違えたら大失敗作にもなりそうな。
でもやってのけた。石井岳龍、もと聰亙。

 

石井岳龍は信頼できる。やりすぎたとしても信じてる。

鈴木清純が引き合いに出されるだろうポップな画面構成。甘くてリズミカルな音楽。
ゆうれい役の真木ようこのコミカルさもすばらしいし、芥川龍之介のヒーローぶりは異常だ。顔のアップだけで息を飲む。
永瀬正敏が元気な姿を見せてくれるのも嬉しい。
久しぶりに「それらしい役」の韓ちゃんも、美しく。
とにかく、うれしいのてんこ盛り。

石井岳龍組ともいえるキャスティング。
ピンク出身?の脚本はサービス精神にみちながら、原作ありという縛りがいいほうに効いてる。

食べたいくらい好きだった「水のない八月」から始まった?ロックンロール!だけじゃない石井監督の手練手管の最高傑作じゃないだろうか?

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蜜のあわれ:愛についての奇妙な映画

人を好きになることは愉しいことでございます。

この一言を言うための映画ともいえる。
映画で描かれてるのは「やわらかい寂しさ」と「命の輝き」。

男と女と金魚とゆうれい。奇妙な関係だけど。
おたがいにお互いのさびしさを想像して涙を流す。

「恋とはこういうものですよ。」

70歳こえの老人「室生犀星」は言う。
恋とは離れていても束縛されて、そばにいても寂しいものですよ。
どうしてこんなに不幸なの?そういって涙を流すのは幸福をしってるからですよ。

そしてもうひとつ

「老いとはこういうものですよ。」

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蜜のあわれは完全無垢なロリータ映画

これは個人的な解釈だけど、ロリータというのは「おじさんが年端も行かぬ娘を手篭めにする」もしくは「幼女育成ゲーム」のような勘違いされているかもだけど、本当は

「どんなに手を伸ばしても届かない「若さ」の輝きを、全力で、かっこわるくてもつかもうとする老人の生きざま」

これこそがロリータだと思う。

性的な意味合いももちろんある。交尾にいかないでくれと懇願する老人はあわれだ。でも、そうするしかできないのだ。自分では「はらませる」事はできないのだ。

性的な興奮は、まっすぐに生きてるエネルギーとなる。スピードの恍惚や、爆音の恍惚とも似て非なるもの。性は生である。生きるために、あがくためには「性」が必要だ。

生きる力が、そばにいるだけで少しもらえる気がするんだ。
生命力のおこぼれがもらえる気がするんだ。
それさえあればまだ、もう一花さかせられるんだ。

まぶしすぎる「性」豊かな生命力の象徴の丸いおしり。
その輝きは年寄りにはすこしまぶしすぎる。
つよすぎる「飛行石」の灯りのように。

 

おまえなんか消えてしまえ!~どこにもいかないでくれ。
このふたつの頂点を行き来するのが人生だ。男も女も、幽霊も、金魚でさえも。

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室生犀星と芥川龍之介。文字を持て闘うふたり

若くして死んだ芥川龍之介への室生犀星のジェラシーはどんなものだったんだろう。
簡単に「友情」とはいえないであろう文壇の、おとこふたり。

生きながらえて、まだまだ書く。
その事でしか芥川龍之介とは戦う方法がない。そのためには金魚の力だって使うさ。

若さを武器に華々しいデビューを飾った石井岳龍。好きな人は好きだけど大ヒット監督とはいえないよね。その彼が「老い」と向き合い、「老い」を愛し、「老い」を暖かく抱きしめて、蹴り上げる。

 

蜜のあわれ:日本中の「老い」に恐怖する大人達に見て欲しい傑作。

ほんとうに満たされるから。
ちゃぽん!という音が頭の中にのこる。

かわいくてやさしくて、笑える。ポジティブハッピー光線が出まくる。でも、出所は「老い」だ。そこが巷に溢れる馬鹿っぽい恋愛映画とはまったく違う。

春は、その渦中にいるときよりも、過ぎ去ってからのほうが美しい。

 

 

何年ぶりだろう。
メインビジュアルを手元に欲しくて映画のパンフレットを買った。
DVDが出たら、きっと僕の本棚にやってくるだろう。

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そしてこの映画をみながらも思い出したのは「汚れた血」だ。
わかいジュリエットビノシュと過ごすミシェルピコリではなく、年老いたドニ・ラヴァン「アレックス」と、ゆうれいジュリーデルピー。
おとことおとこ。おとことおんな。おんなとおんな。

 

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