ミッドサマー:ディレクターズカット版:誰にも感情移入できない
ヘレディタリーっていうホラー映画の監督の新作ってことは知らずに、予告編を見て「こりゃ間違いないばい」と思った。 SNSで約3時間のディレクターズカット版が公開されるって知って、それを待つことにした。
中洲大洋劇場。すごく久しぶり。
めちゃめちゃキレイになってる。
若者も年配者もまあまあの入り。
このご時世に。
この映画の「なんだかやだな」っていう雰囲気を楽しみにしてる変わり者の集まりか(笑)
ヘレディタリーもそうだったけど、主人公のだれにも感情移入できない感じ。
正統派ホラーの多く(エクソシストとかオーメンとか)がもつムードの圧倒的存在感が、安易な「感情移入」を拒否して、それでも物語を転がしてゆくサウンドと画力。
白夜の村「ホルガ」に到着するの道のり、ぐるーーーんとひっくり返るカメラ。
もう、帰ってこれない感が重くのしかかる。
登場人物、まずは西洋からのゲスト扱いの
- ダニー
- クリスチャン
- ペレ
- マーク
- ジョシュ
ダニーは冒頭で「うつ病の妹が両親を道連れに自殺する」という最悪なシチュエーション。
もともとパニック発作もあるようで、感情の振れ幅が見てるものの手に余るくらい。
その彼氏クリスチャン。別れようと思ってるのに別れられない。いろいろ優柔不断で勝手に卑屈になる。ほんとイライラする男。
ジョシュは学問以外には関心がなさそう
マークはただのゲスなチンコ男
そして問題なのはこの村出身のペレ。いい人そうに見えるけどね。
きっとみんな死んじゃうか、ひどい目にあわされるってことはまあ、ホラー映画の鉄則。
でもだれも「かわいそう」って思えない。
そこが素晴らしい。
ミッドサマー:ディレクターズカット版:暗闇に雪が降る中、タイトル「MID SOMMAR」が現れる
真っ暗な夜の描写から一転、夜のない白夜のミッドサマーへ。
タイトルが出るのがここ。
普通考えたら白夜の村の空撮あたりでジャーン!ミッドサマーってなりそうだけど。
この「都会の闇/うつ病の自殺」と「花とドラッグ、笑顔と太陽の光」は結局おんなじものじゃない?
そんな気持ちになる。
村について、車を遠くにおいて、歩いて行く。
これでもう「逃げられない」よね。
「あーあー置いて行っちゃたよ」って見てる人はわかるんだけど、旅のガイド(しかも友人)からいわれると「そーかーじゃぁしょうがないよねー」ってなっちゃうんよね。
絶対、車は近くに!
ミッドサマー:ディレクターズカット版:自然の力、大地の力、それはもうほぼカルト(笑)
青い空。ドラッグを勧められる一行。
開放的な異国の地で、自然の力を感じる。
大地に癒される。
自分が草木の一部になる感覚。
そういうのが特に無理(笑)
僕は
- 自然の力
- 大地の力
- 土いじりの癒し
- 無添加、有機
なんてものが全くもって「うそくさい」と感じてしまうので、白いさらさらの服を着た、髪に花を飾った白い肌、金髪の少女たちっていうだけで「うへーー勘弁してくださいな」と思うんだけど(笑)
90年に一度の夏至祭が行われる。
ここで?っと思ったんだけど。
ここにいる全員が「前回の祭りを知らない」はずよね?
でも粛々と式次第にのっとって進められてる感じ。
これがすごく怖い。
粛々と進められて、引き返せない感じ。
流れに沿って、流れに身をまかせるしかない感じ。
村の人々のダンスや音楽も、そういう意味で怖い。
まあ、大きな祭りは90年に一度だけど、ミッドサマーのお祭りは毎年あってるのかもしれない。
「72歳までで人生おわるんだよ〜〜」
なんて説明されてる。
ミッドサマー:ディレクターズカット版:老人は命を回すために飛び降りる
まあ、このくらいまでは書いてもいいかな?
最初は彼らは観光客として、儀式を見物する役。
それが、だんだん儀式に参加するようになり、渦中に巻き込まれていくことになる。
ほら、「お客さんも踊りましょ!」っていわれて断れずに参加しちゃう感じ(笑)
ホルガの人々は明るく親切で、笑顔を絶やさない。
白夜の明るい青空の下、花が咲く緑の野原で、美しい民族衣装を着た北欧の美男美女たちが音楽を奏で踊る。
ここは「天国か?」と思ってしまう。
でも2日目でさっそく、老人が崖から飛び降りて自殺する「儀式」に直面する。
観光客な彼らは叫び嗚咽し、ショックを受けるけど
「ごめんね説明してなくて(笑)これは私たちの伝統文化なの。命をまわしていくのよ(微笑)」
なんて静かに説明されたら「そんなものかも?」って思ってしまう。
だってここは異国だし。
みんな感情的じゃないし。
ましてや自分は「観光客」だから、殺されるわけじゃないだろうって。
逃げ出すタイミングを失って、そのままこの村に。
論文の材料にもすごくいいし。
この「未開の地」のことを、我ら「文化人」が世界に紹介しょう、なんてクソみたいな考えと企みを持ってるから、この場をさることはできない。
ミッドサマー:ディレクターズカット版:どんでん返しとか、意外な展開はまったくない
ストーリーとしての面白みは、特にないと言い切ってもいいかも。
そのくらい少ない伏線回収、少ない枝葉(深掘りすれば儀式のあちこちにヒントがあるんだろうけど)美しい画面にクラクラしながら三時間しっかり楽しめる。
映画に慣れてない人でも、話が理解できる。
そこで起きてることが理解できるわけじゃないけどね(笑)
ディレクターズカット版じゃないものは「ぼかし」が入っていたそうだ。
どこに?っていうくらい「無修正感」はない。
性的なシーンもあるけど、「スケベ」ではない。
どっちかっていうと「笑っちゃう」感じ。
残酷なシーンも言うほどない。
ハンニバルやコックと泥棒みたいに「うへー」ってはならない。
ま、それは僕が「白い服の花を飾った美少女」を、ハナっから警戒してるからかもしれないけど(笑)
長い映画ではあるけど、この「じりじり」した感じを楽しむのもいい。
サウンドが、音楽がとてもいい。
パラサイトでも感じたけど、いい映画にはいいスコアがある。
家でDVD見るだけでは伝わらないかもだから、映画館で「映像と音」を体感してほしい。
ミッドサマー:ディレクターズカット版:感想まとめ
ネタバレは最小限にしたいので。
こっからは感想を。
継承されるってことは「システム化」されるってこと。
自我を捨て、変化を捨て、守り抜くこと。
新しいなにかを探さずに、同じ時間を繰り返すこと。
「死を恐れないよ。だって命は巡るんだから」そう言いながらも恐怖が顔に出てしまう。
それに気がつかないふりをする。
従う。
誰かの書いた筋書きを守る。
都会の鬱的な生活から逃れて、太陽につつまれた人間らしい生活を!
そんなものはない。
都会には「都市生活」という縛りがあり、田舎には「絆」「家族」というしばりがあるだけ。
どちらの縛りが体に合うか?
ただそれだけ。
個人が個人でいることを許されない世界。それが「天国」なのかもなぁと思った。
あと女性は「共感するいきもの」「共鳴する」鳴り物というという描かれ方がすごく納得できるつくりになってる。
共鳴、共感は「個人を統制する」ものでしかない。
手を取り合う、お互いを確かめ合う。
それこそが鎖だと思った。
共鳴する集団は狂気でしかない。
僕らのそばには「SNS」という共鳴システムがある。とても恐ろしい。
ホラー映画とは言い切れないので「怖い」って喜ぶこともできないけど、映画を観終わって不思議な「幸福感」もある。
爽やかな読後感がある。
なにも意外な展開がないのに、ものたりなくない。
それはすごいこと。
- Midsommar(2019 アメリカ、スウェーデン)
- 監督/脚本:アリ・アスター
- 製作:ラース・クヌーセン、パトリック・アンデション
- 製作総指揮:フレドリク・ハイニヒ、ペレ・ニルソン、ベン・リマー、フィリップ・ウェストグレン
- 撮影:パヴェウ・ポゴジェルスキ
- 編集
- ルシアン・ジョンストン
- 音楽:ザ・ハクサン・クローク
- 出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ウィル・ポールター
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