浅田真央がめざす光、見せる光 (前・その日まで)

フィギュアスケートは思いきり、オフシーズンですが。

3月初めにNHKで、浅田真央の番組がありました。
『浅田真央 未来への光 ~子供たちとともに~』

1月9日、盛岡市で行われた復興支援のチャリティアイスショー。
彼女がそこで、東北の子どもたちと一緒に
「ジュピター」というプログラムを滑るまでの、数日間の密着取材です。

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今回は、彼女が初めて、セルフプロデュースをつとめるプログラム。

前年11月末、競技シーズン真っ最中、
NHK杯を終えたころから、仕事は始まっていました。

全体の流れの構想。
プログラムに合った衣装。
メロディ後半につける、歌詞。
それぞれにスタッフがいるけれど、彼女が統括していきます。

年が明けて、1月4日。
浅田真央、盛岡市アイスリンクに到着。

競技プログラムでも毎年タッグを組む振付師、
ローリー・ニコルもカナダから来日します。

プログラムは、1曲、時間にすればわずか4、5分。

「大震災を経験して苦しむ人々が、やがて手を携え合い、未来への光に向かって進む」
という、いってみればシンプルな筋書きなのですが。

氷上で一緒に滑りながら、ローリー・ニコルは振付の意図を解説します。

「あなたは完全にひとりなの。ひとりぼっちなのよ。
天を仰ぎ、希望を失う。
がんばってがんばって、もうこれ以上がんばりたくない、って時がくるの。
その悲しみや孤独を表現してほしい」

もうこれ以上がんばりたくない、という悲しみや孤独。
もちろん、震災の経験とはまったく種類が異なるだろうけれども、
彼女にも、身にしみてわかる感覚なのではないかと、ふと思いました。

1月5日、盛岡市アイスリンクに子どもたちがやってきます。
小学校高学年から中学生まで、全部で8人。
皆、5年前に震災を経験しています。

最初は陸上で大まかに振付けるのですが、
市営の、さほど大きくはないリンクだから、
受付ロビーの狭いスペースにそれぞれが小さなマットを敷いて練習。
子どもたちも。もちろん浅田真央もその中にいます。

真央、子どもたちに説明
「一人ではなく、支えられて生きていることを表現しています」

やがて氷上に移ってからも、いつも彼女が中心にいて、
子どもたちに手本を示し、言葉をかけます。

ローリー・ニコル
「真央はとても良い先生役ね。いいわ」

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1月7日の練習中、突然、トリプルアクセルを跳ぶ浅田真央。

女子の現役選手で、継続的に挑んでいるのは彼女ひとりだけという大技。
それも試合に限ってのことで、アイスショーで跳ぶのは、まったく異例のことです。
成功する確率も、必ずしも高くはないし、
トリプルアプセルを1本跳ぶだけで、体力を消耗してしまいます。

ローリー
「(トリプルアクセルを跳んだことに)驚きはありませんでした。
子どもたちと滑ることで勇気をもらったのね。
子どもたちの存在が、真央を羽ばたかせた。
跳びたいと思ったのは当然よ」

真央
「子どもたちが、朝から晩までがんばって練習してくれて…。
(私は)やらなきゃいけない立場。
どんな状態であっても、できるまでやります。」

1月8日、本番を前にローリー・ニコルは帰国します。

「このプログラムはあなたの夢だったのよね。
だから楽しんでね。夢を忘れないで。」

と真央に言い残して。

(後編につづく)





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