萠珈【シリーズ:歌姫たちの背中と横顔:05】
さて、シリーズ最後は、最強のソングライターだと思ってる萠珈。
福岡アマチュア音楽界隈と積極的に交流を持ち始めて1年半くらい。
キャバーンビートでイベンターのおさかさんと出会って、福岡のいろんな若者のライブを見て、レビューを書いた。
みんなそれぞれ特色があるんだけど。
萠珈には本当に驚かされた。
最初のインパクトもそれなりにあったけど(彼女は金髪で、お友達という人形を隣に置いてライブをする。)それ以上に、知り合ってからの作品のグレードアップの加速度だ。まだ一年も経っていないのに。
最初に見かけたのはゲリラハウスのクリスマス会。
小佐井みなみのサポートで何度か出たことはあったけど、僕はまだ、ほとんど一見さんだ。
そこで見た萠珈は少しダークな色合いの歌を歌う人だった。
知らない場所で初めて会った若い女の子に声をかけるほどの勇気を持ち合わせていない僕は(笑)その日そのまんま。
年が明けて、2月。あるイベントで一緒になって、音楽の話や映画の話をした。
あまり言葉を発さないけど、知識欲の塊を感じた。
この日のライブでも歌詞の素晴らしさと、ありえないコード進行にびっくりした。
ちゃんとヒップホップを抜けてきた言葉のチョイスと、文壇から転げ落ちた私生児のような着眼点。
シンガーとして尊敬する人はたくさんいるけど、ソングライターとして「これはすごい!やられる」と思ったのは萠珈だけだ。
三月のワンマンにも顔を出した。
いつもより多く歌われた曲が、どれもかぶっていない。
バラエティ感はあるのに、一枚のレコードに入ってる感じ。
9曲なら、9人の萠珈がいる。そんな感じ。
それからはもう「メラリスト」だ。(萠珈の作品がいちいち作家としてメラメラすることから命名された)
萠珈【51歳ラストデイに始めた阿片戦争は萠珈のおかげ】
やる気に満ち満ちた僕は、ずっと温めていた「阿片戦争」という一人ユニットを始めた。彼女に負けられないという気持ちだけを持って。
しかも、彼女がトリを務めるプレイボールの準レギュラーに抜擢される。
毎月、彼女は新曲を持ってくる。
その一曲一曲が本当に素晴らしい。
人が成長する、もしくは遠くまで飛んでゆく様をそぐそばで見ることができる快感。
ギターを隣で弾く喜びも確かにすごいけど、まるで夕暮れにUFOを見かけたような高揚感。会う人会う人に「こんなすごい奴がいるんだ!」って話しして回る勢いだ。
これは初期の萠珈の曲。動画は僕が勝手に作ったもの。
52歳バースデイライブにも遊びに来てくれた。
僕が53歳になる時、まだ福岡にいたら、ぜひ出演してほしい。そして、その可能性が低いほど嬉しい。
萠珈【ギタリストを勤め、念願のデュエットへ昇格】
とにかくいつものように、僕は勝手に音源にギターをかぶせ送りつける。
もちろん一生懸命だ。
挑戦状だから。
彼女はそれを受けてくれた。
一緒にスタジオに入って練習してみた。
サックスやマンドリンを持ち込んで。
マリリンマンソンのカバーを一緒にやったのが初めてかな?
そうそう。このシリーズの企画は「サポートギタリストの愉しみ」だった。
萠珈に自分のビートがあって、僕はそのビートをより効果的に伝えるアレンジを心がけている。
ステージ上で後ろから見る萠珈の姿は、悲痛な優しさに満ちている。
羽をもぎ取られ、背中から血を流すかのように。
死にたい、とは言わない。でも、意味なく生きたいとも思ってないはず。
細くて折れそうな体と、見るたびに違う髪の毛の色。
「くそったれ!」
叫ぶ人が囁く時のとろけそうな甘さを知ってるかい?
僕はステージの一番近くでそれを感じる。甘い毒を。中毒になるのもしょうがないよな。
阿片戦争を始めた時に、企みがあった。
「萠珈と【白樺の森】をデュエットしたい」と。
この曲は僕の大好きな曲なんだけど、過小評価されてる(笑)この曲を彼女とやれたら幸せだと。オーケーをいただいた時は天にも昇る気持ちだった。
この曲ができたことで、阿片戦争ファーストCDはできた。
一刻も早く彼女の歌を録音しないと。
僕の作品に刻まないと、世界が彼女に気づいてしまう。
萠珈【もっと一緒にやりたいという気持ちと同時に】
白樺の森を数回、デュエットしてから、彼女とはあまり絡まなくなった。
僕の入る場所がなくなるくらい、彼女は一人で高く飛ぶし、新しい曲をたくさん作る。
それよりも何よりも、僕は彼女と同じステージに立つのと同じくらい、彼女の歌を客席から聞いて踊るのが好きになった。
こんなことは普通ありえない。僕にとって。
僕はジェラシーの塊で(笑)、一度一緒に音楽をやった人が僕よりうまい、もしくは下手なギタリストと一緒にやってるのを見たいと思わない。「僕ならこうする」って思ってしまうから。
彼女が組んだバンド(残念ながらそのライブは見れないのだけど)にギタリストが入っていたら、そりゃガン見するだろう(笑)3ピースでほっとした。
最近、週に三回彼女のライブを見る機会があって、どれもが違った肌触りだった。
それから後は、2週間も空くと禁断症状が出るようになった。
困ったもんだ。
彼女のライブを見るたびに、僕の中では「僕のアレンジしたサウンド」が高らかに鳴り響き、地の果てから大気圏を超えるところまで連れて行ってくれる。
萠珈【もっと遠くへ、数え切れないひとりぼっちのための音楽を】
もう、萠珈は挑まなきゃならない。
世界中の不条理と不合理に。
僕はそれを見たい。
太陽に焼けつくされ落ちてくるのか?
より大きなマーケットで神になるのか?
今、一番のソングライターライバルで、認めたくないが少し負けてる。絶対にいい作品を作らなければというプレッシャーをありがとう。
永遠のダンスと、一瞬のため息を。
この初老に与え続けてくれ。
【609号室】ガーリーおじさんはまったく役に立たない2017
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