エルメスの手しごと「アトリエがやってきた」@JR九州ホール

エルメスの手しごと「アトリエがやってきた」:ハイファッションを支える力

金曜日に妻からラインがきて「これにいきたい」とのこと。

URLを押すと、「エルメスの手しごと」とある。
エルメスの職人さんたちのしごとを紹介するイベント。入場無料。

なるほど、動画とか写真とか、作品が展示されてるものだろうなぁと思って、その日はどくんごのお芝居を見に行くという大きな予定はあったけど、「ちょっとなら」と、出かけた。

 

入場規制がかかるかも?何て言われていたけど、開場前に着いたら人はいない。
なーんだ。と外で待とうかなーと思ってると。

「中でお並びいただいております」

ええ?

 

さっそく門をくぐると長蛇の列。
わわわわ。

 

本会場が開場されると同時に人でブースはいっぱいに。

そこには職人さんが、リヨンのアトリエと同じことをしてる。

 

最初に見たのは「グローブ職人」のブース。

子羊一頭から、一組の手袋ができる。

軽く、柔らかくするために引っ張り、調整する。

指の長さの方の革は伸びないように、型崩れしないように。
指周り側の革は、伸縮するように、指にフィットするように。

皮を触らせてもらった。柔らかいし、一方向にしか伸びない。

 

美しいアートと、実用性を兼ね備えた手袋。
一頭の子羊の命と引き換えに出来上がる手袋。

僕らのすべて。周りにある有機物も無機物も、地球上のなにかの犠牲の上にある。
森を壊し、水を汚し、空気を汚し、命を奪い生きている。

それぞれものの考え方はいろいろあるけど、それは事実。

十万円近くするエルメスの手袋を見て思う。
命を大切にしなきゃと。
敬意を払わなければと。

 

次にスカーフの「かがり職人」のブース。
美しいフランス語で語られるその作業工程。

お針子さんというイメージからはほど遠い。鼻歌が出そうな作業中の雰囲気

 

すべて人の手によるもの。

エルメスの指針は「普及」や「繁栄」、または「大儲け」ではないように思える。

「良いものを作り続ける。そして作る人をも豊かにする。」気持ち。

しごとに誇りを持ち、修行する職人たち。

 

かっこいい。

職人という言葉から「一芸を磨くために必死に、歯をくいしばる」イメージがあったけど。

 

一つのアートを、好きで、信じて、毎日鍛錬し、技術状態を喜ぶ人たちだなぁ。

 

フォトショップを使って何十枚ものレイヤーに原画を再現するための「版」を作るお姉さん。

 

馬の蔵造りにはしびれた。

馬も、騎手も一人づつ違うから、完全オーダーメイド。

  1. 馬のサイズを測りにいく
  2. サイズにあった木の本体を作る
  3. そこに皮を当てていく

1と、2は違う部署の担当だけど、そのあと木のベースに革をあてがい、釘を刺し、ネジで止め、仕上げるのは一人でやるそうだ。

30時間くらいかけて。

木のベースには何十本と釘が打たれていく。
何重にも重ねられた革を釘で止めていくんだけど、何ミリも下の釘の位置を手で確かめながら打つ。少しでも釘同士が当たると強度に問題が出てくるので、やり直す。
侵入角度を微妙にずらしながら。

何度も何度も彼女はやり直した。

実演時間をかなりオーバーしてた。

でも最後にはたどりつた。

すごい。

 

これでいいんじゃないかな?ってのはない。

だってその後の厳重な検品ではねられるから。

製品にはナンバリングがあり、誰が誰に作ったのかわかる。

利き手とは逆方向で釘を打つ。ほんの数ミリの隙間を見つけるために。

すごい。

 

宝石を入れる穴を掘る仕事とか

僕には部品がどこにあるかも見えない「時計」作りの人とか

 

ものすごい。

 

 

一番人気のあったブースはやはり、スカーフのシルクスクリーン。

色を重ねていく。

一匹のカイコガが作る400の繭を糸に紡いシルクを作る。

そこに「印刷」していく。

30色使われていれば30回。版を重ねる。

 

ほんの少しでも出来上がりが悪いと、検品で落とされ裁断される。
だからエルメスにアウトレットはないと言っていた。

 

結局気づけば2時間半立ちっぱなしでいろんなブースを見た。

体がわなわな震えるくらいすごい技術で、胸がいっぱいだ。

 

技術は作る人の喜び。
それでいい。

その喜びを買うことができるのはごくわずかな人たちだとしても。

 

【609号室】ガーリーおじさんはまったく役に立たない2017





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