ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ:ネタバレしても全く関係ない大傑作
いやはや、またとんでもない作品が。
記憶と記録。映画と夢と現実。
その垣根がこわされて、脳内が軽いパニックになる映像の連続。
受け入れられない人にはまったくもってダメな映画だとは思うけど(笑)
大方のストーリーはこう
父の死をきっかけに、何年も距離を置いていた故郷の凱里へ戻ったルオ・ホンウ。
そこで幼なじみである白猫の死を思い起こす。そして同時に、ルオの心をずっと捉えて離れることのなった、ある女性のイメージが付きまとう。香港の有名女優と同じワン・チーウェンと名乗った彼女の面影を追い、ルオは現実と記憶と夢が交わるミステリアスな旅に出る。
時間軸はバラバラに途切れ、登場人物の輪郭は揺らぎ、あれ?この人誰だっけ?ええと。
そういう「お話を追う」ことに慣れてる脳味噌を遮断してはじめて楽しめる。
前情報はなにもなく、みた。
でも、情報を与えられた後でも「?」は変わらない。
夢落ちかよ!っていう映画にゲンナリしたり、
監督の脳内を表現するだけのさむい作品も多い中、この「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」は「ただの夢の話」をこれ以上ない力技と繊細なカメラワークと色彩で私たちに届けてくれる。
こちらがそれを受け取るかどうかはその人次第。
ぼくは早くこの映画を所有して、何度も何度もみたいと思った。
ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ:フェチズムの前半
前半は「謎」が現れては消え、揚揚のない中国語のダイアログが続く。
僕らをまるで眠りに落とすかのように。「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」は映画館で正しく眠るためのフィルもとも言える。
すこし、うとうとしはじめたあと、脳の回転が緩くなってから、観客が見る映像と自分のもつ記憶・ノスタルジーが混ざり合ってくる。
行ったこともない土地への郷愁、あったことがないはずの女。ん、いや、どこかであった?
雨が全編にふりそそぐ。
トンネルの中に降り込む。
屋根があるところは一瞬、雨音が途絶え、人の声が聞こえる。
そしてまた、雨で遮断される。
パラパラパラと雨の音。暗闇の中。
観客は映画と同じ闇にいる。
電気をつけると、無数の光の雨。
音の情報と、目からの情報の量を計算して作られる画面。
次はこうなるのでは?
映画をみてるとそんな思いがわく時が割るとあるよね。
その時、
- 「その通りに行っても」〜なんだつまんね〜
- 「意表をつかれても」〜なんだよその伏線回収のなさ!
なんて文句言いたくなるよね。
「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」は違う。
意表を突くキングコブラも
寸止めされるカラオケリンチも
立って歩けるほどのプールも
回転サーブの威力も
どれも「まいりました」といってしまう。
ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ:プレッシャーの後半60分一本勝負
ルオ・ホンウが映画館へ行き、3dメガネをかける。
ここからが驚愕のワンシーン。
僕はこの情報を知らなかったので「え?ちょっとまって?さっきからシーンは変わってもカメラチェンジがない!!!」て気づいた時、鳥肌が立った。
真っ暗な中、薄明かりのライトで「ここはどこか」を探るルオ・ホンウ。
あらわれる牛骨を被った子供。
まるでホラー映画のように「びっくり」を楽しめた。
前半の漂うムードは「劇中劇に参加する緊張感」にとって代られる。
ここからエンディングまでの美しすぎる「記憶のはかなさ」の表現は、映画が好きな人、虚構が好きな人、ノスタルジックな思いに浸りたい人全てが体感して欲しい。
ほんとうはこの部分は3D映画なのだそうだ。観客も同じタイミングで3Dメガネをかけるんだそうだ。
それは体験できなかったけど、脳内の情報分析量の低い僕にはちょうどよかった(笑)
ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ:欲望の翼+ブレードランナー@ホワイトロッジ(ツインピークス)
雨が降り頻る中、男は「過去」を探す。
「過去」は今の自分を縛り、走らせる。
ウォンカーワイの影響をビシビシ感じるし、リドリースコットの冒険劇も。
デヴィッドリンチのムードも、なんならクローネンバーグの色彩もある
偉大すぎる監督たちの影響を増幅して「私的」であり続けるこのビー監督は30歳手前。長編二作目だという。
前作も賞レースで大絶賛だったらしいけど、そんな「若手監督」に、こんな大作をつくらせる中国の映画産業の懐の深さ。
ちびたテレビムービーばかりでギリギリ採算合わせてる島国とは訳が違う。
撮影監督が豪華で、
- 侯孝賢のヤオ・ハンギ(台湾)
- ディアオイーナン監督のドン・ジンソン(中国)
- 裸足の季節のカメラマンダーヴィッド・シザレ(フランス)
照明はやはり、ウォンカーウァイのウォン・チーミン
架空の街を、技術者たちが全力で作り上げている。
何十年も映画を見て来たけど、これほど質量と湿度をかんじる「夢」は初めて。
ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ:サウンドの、音楽の重要性
良い映画が必ず良いサウンドトラックに恵まれている(逆もまた然り、とはいえない笑)
イントロから踊りたくなるような深い残響のギターと静かなラテンリズム。
二胡やアジアの弦楽器もとてもいい味を出してる。
オルタナティブ音楽に明るいのかもしれない。
さらに素晴らしいのが「距離」をあらわす音。
遠くの雨、近くの雨の音域の違い。
前半部分のリアルな録音。雑踏。修理音。
壁を隔てた音楽の「重低音のこもりかた」から、人物が移動すると音が変わる。
スピーカーの前を一周するように音が変わる。
予告編をみて、「なかなか絵柄がスキー」みたいな軽い感じで「終演間近」だったから行ってみた。
コロナ騒動のおかげで、もう何ヶ月も映画館に行けてなかった。
映画は「全力で夢を見させ、全力で現実の血飛沫を浴びせる」ものだと思うので、映画館復帰作がこの「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」でほんとうによかった。
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