野坂昭如、逝去。
私(昭和53年生まれです)以下の世代では、圧倒的に『火垂るの墓』の印象が強いと思うんですが、私にはもうひとつ、彼の小説で、トラウマ級に衝撃を受けたものがありましてね。
「火垂るの墓」の清太と節子とが戦後まで生き残ったとしても、こういう地獄を味わったかもしれない・・・と思ってしまう凄まじさなのですよ。
『花のお遍路』という短編小説です。野坂さんへの追悼の意を込めて、ここでご紹介しますね。
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成績優秀な兄。気立てのよい妹。
眉目秀麗な2人はとても仲の良い兄妹。
父は早くに亡くなっている(だったかな? とにかくいない)。
兄は在学中に学徒動員へ。
戦争が終わっても、行方は杳として知れない。
母は生活苦もあり、再婚する。
妹は新しい父が好きではなかった。
ある日、母の不在時に、妹は父に強姦される。
関係を強いられ続ける妹。
やがて母は気づき、娘を責める。「いやらしい子だよ」
けれど、夫の前では気づいていないふりをする。
母と娘、2人で男に尽くし続けることが、男を喜ばせ、つなぎとめると知っていたから。
やがて妹は異常な家を出る。
兄が復員してくる。
が、心身は虚弱し、廃人同然の状態。
妹は垢の凝り固まった兄の体を丁寧に洗う。
股間に触れると、それが反応する。「あら。」喜ぶ妹。
妹は兄と暮らしはじめ、献身的に尽くす。
やがて兄は復調。
妹がどうやって自分を養っているのか、疑問を抱く。
妹ははぐらかして答えない。
ある日、妹がパンパンをしていることを知る兄。
パンパンって、今は知らない人も多いかな?
売春婦のことですね。
中でも、妹は、町に立って客を引く「立ちんぼ」、下層の売春婦だった。
兄は衝撃を受け、激怒する。
私にできる仕事なんてこれしかないじゃない! と言う妹。
客を引く、あけすけで淫らな誘い文句を諳んじてみせる。
兄は妹を家に閉じ込め、売春できないようにして、自分が働き出す。
しかし、妹は兄の不在時に家に客を連れ込んでいた。
お金が目的ではない。
売春生活をしているうちに、セックス中毒になってしまったのだ。
かわいらしい容姿の娘がさせてくれる、と噂になって、相手は引きも切らない。
そのうち、妹は性感染症をうつされてしまう。
それでも、セックスがやめられない妹。
セックスのできない日が3日も続くと、禁断症状で半狂乱になる。
月日が経ち、妹も若くはなくなり、またセックス中毒と性感染からの病気(梅毒?)で、頭は朦朧とし、容貌も体も醜くなっていく。
「頭がおかしいおばさんだけどやらせてくれる」
自然、妹を弄ぶ男たちも下種になっていく。
兄は決心し、妹のセックス依存を自分が引き受けることにする。
粗末な家、社会との関わりもほとんどなく、体を重ねる2人。
兄と交わることに歓喜する妹。
やがて年月が経ち、おそらく昭和40年前後。
四国のお遍路を回るツアー。
ガイドが、ツアーメンバーの紹介がてら、一人ずつ名前を呼ぶ。
名を呼ばれた妹は、かわいらしく返事をする。
けれど顔かたちは病気によって崩れ、また正気かどうかも定かではない表情。
ツアー客たちは正視できず、眼を背ける。
ツアーの休憩時間に、兄と妹は人目を忍んで慌ただしく野合する。
妹は我慢できなくなるのだ。
暗くみすぼらしい中年の兄妹が交わる姿を野坂は描写する。
激しく兄を求め、よがる妹。
兄は目をつぶり、少女の日のかわいらしい妹を思い描きながら射精する。
病気の進行具合から言って、妹の寿命はもう長くない。
2人にはお金もない。
路銀が尽きたところで、自分たちは野垂れ死ぬだろう、と兄は思っている。
半ば心中を思い描いて、申し込んだお遍路ツアーである。
お遍路道は、美しい花盛りである・・・。
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・・・・という、お話です。
鬱すぎるぅぅぅ!
今はもう手元にないので、記憶をもとにあらすじを書いたので、ところどころ記憶違いがあるかもですが、大筋は間違ってないはずです。
戦争によって破壊される生活。人生。
強烈な反戦文学であり、あまりにも哀切な恋愛文学であり、むせ返るほど濃厚な官能文学でもあります。
これ、私、確か20才そこそこで読んだのでね・・・ほんと衝撃で、読後は憂鬱で・・・。
ちょっとしばらく、この本を触ることすら、ためらわれたもんね。
でも、これほどの読書体験は、なかなかありません。
若いときに触れていてよかったと今は思います。
シンガーでもあったのですね。全然知らなかった―。
野坂さんのご冥福をお祈りします。
そしてこれからは私たちが戦争について考え、語り、伝えてゆく世代なんだよね。
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