イントロシーンがものすごく叙情的で「おお!これは久しぶりに質のいいサスペンスかも!?」と期待したら、すぐさまバイオレンスと狂気映画になり、あれれ?と思うと流行の「痛みを楽しむ系」のホラーになり、ツインピークス的な笑いの後、なんだか8時だよ全員集合!ぽい笑いに落ち、そして最後は正統派サスペンスぽいエンディングになる。
わけわかんない映画だけど「つまらない映画」じゃない。そこが面白い。
まあ基本的にイスラエルなんて国は「よい殺し」しかないようなところだと思ってる。
そういうイメージをイスラエルの製作の映画なのにすっきり感じられる。これってすごいよね。
たとえば北朝鮮で映画を作ったとして、北朝鮮の嫌な部分をだしたりなんて絶対できない。
でも「オオカミは嘘をつく」にはユダヤ人の残虐性と殺人を、暴力を正当化する国民性がでてる。これって自由な表現ができる国だってことかもしれない。イスラエルが。
アラブ人をゴミだと思い、恐がるユダヤ人。
仕事でアラブ人を殺す人たちが公務員の国だからね。
だから暗がりでアラブ人に遭遇すると、命からがらの逃亡中なのに両手をあげる。殺さないで!とでもいうように。
ユダヤ人がアラブ人を平気で殺すように、アラブ人もユダヤ人を平気で殺す人種とユダヤ人は思い込んでる。という設定。痛快だ。
そしてこの映画で描かれるアラブ人はエレガント。実際はどうなのかわからないけど。これが世界に対する言い訳なのかもしれないけど。
そういう政治的背景なんかもすこし感じさせていながら、エンタメに徹する。安っぽいスピルバーグの映画とは全然ちがう。ここがフィクションの力強さかもね。
当事者だからこそ描けること。これが映画の面白さ。
すっきりするシーンは全然ありません。気持ちの悪さが残る。
でも、なんか笑える。
僕が変なのかもしれないけど、プッって。笑える。
次から次へ拷問シーンがあって、中座したくなるところをこの妙な可笑しさがくっつけていく。
45歳にみえないじいさんが面白い。
狂気に満ちた顔というより、もっと奥のほうで狂ってる。行動は怒りに任せてるわけじゃなく、自然に狂気があるれてる。
コメディ映画のような味わいをもたせてるのは、登場人物が全員まぬけだというところ(アラブ人以外は)
ブラックジョークという言葉がぴったり。
あ、でもね、タランティーノが「ナンバーワンだ!」とか言ってるけど、そんなことはないよ(笑)
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