最終回のラスト近くで、山路が子どもたちに向かって
「人の失敗を許せる大人になってください」
と言ったとき、ああ!と思った。
そうか。そういうことだったのか。
思えば数々の失敗が描かれてきたのだ、
坂間、山路、まりぶの3人の「ゆとり」たちは。
営業から店舗勤務に飛ばされ。
山岸にパワハラで訴えられ。
まりぶにおっぱいパブでぼったくられ。
悦子先生は「叱られた」「グイグイくるんです」なんてその場その場で都合いいし。
あげく静馬のせいで学校中に童貞をバラされ。
まりぶは植木の職場で暴力沙汰を起こし。
妻子に逃避行を強いて。
自業自得にしろ、とんだとばっちりにせよ、みっともない失敗ばかり。
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それと同時に、「失敗を許す」姿も描かれてきた。
山岸を許し。
ぼったくったまりぶを許し。
悦子先生と静馬を許し。
妹をガールズバーで働かせ不倫までしたまりぶを許し。
父親である「レンタルおじさん」麻生を許した。
◆
最終回間近になって、茜が上司と関係を持ち、それを坂間に自ら打ち明ける展開に、
「そりゃねーだろ」と思ったのだけど、だからこそ最後に持ってくるエピソードだったんだ。
大きくて愚かすぎる失敗だからこそ。
課長との関係を告白してしまった茜。
失敗しなかった茜の失敗。
失敗を隠しておくことの難しさ。
坂間にとっては、失敗を許すことの難しさ。
「失敗を許せる大人に」それは簡単なことじゃない。時にものすごく難しい。
悩み苦しむ坂間を見て、茜も苦しむ。
失敗は時に、簡単に許されることじゃない。相手を苦しめる。
一生黙っておいた方が相手への優しさだった。
黙っておけなかったのは、茜の弱さであり、愛かもしれない。
弱さも愛も、それらを丸ごと受け止めるかどうか、坂間は迫られた。
痺れた足で、花嫁衣裳や鬘を脱ぎながら匍匐前進する茜の姿は、
とてつもなくみっともなくて、恥ずかしくて、エロティックだった。
衆人環視の中でさらけ出される失敗。
でも茜はひるまず、叫ぶ。
結婚式という儀式の場をうまくやりこなせず、
でも最後には自らぶっこわして、身も世もなく坂間を求める
(それを待っているまーちん=岡田将生の表情!)。
ようやくたどりついて坂間に抱き留められた茜は、
まるでエクスタシーに達した事後みたいな表情に見えた。
それをみんなが祝福してる。すごくよかった。
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坂間も山路も、失敗しても、恥ずかしいめにあっても、職場を辞めなかった。
ただいるだけの人にもならず、なんだかんだずっと一生懸命だった。
これはゆとり世代にとって難しいことだと、一般的にはいわれている。
プツッとやめちゃう。ばっくれちゃう。興味のないことには無気力。
山岸がその最たる例。
序盤の山岸と、自殺した男性のエピソードは強烈だった。
自殺した彼は失敗から立ち直れなかった。
脚本家はそれを本人のせいとも言わないし、直属の上司のせいとも言わない。
ただ環境が彼の失敗を許さなかった。
彼の環境には失敗を許せるゆとりがなかった。
そして、人間は、死んだらもう二度と次の失敗もできない。
「ゆとり世代」であるアラサーの男子3人+茜が中心になりつつ、その上下の世代もくまなく描いていく。
坂間たちの上が、兄の宗貴夫妻。
その上が、早川課長や、山路の小学校の先生たち。
その上が、麻生や、坂間の母や、茜の父。野上さん。
坂間たちの下が、山岸や悦子。
その下が、ゆとりや静馬。
くまなく、足りなかったり、ろくでもない部分を持っている。
彼らもいろいろ失敗をする。
世代関係なし。
ただ、
「上の世代は下の世代に対して良き年長者であれ」
という描き方をしているのが、クドカンらしい善性だなあと思う。
このドラマでは、親は子を、先生は生徒を、兄は妹を、上司は部下を、相応に大事に思い、行動で表す。
それをできない大人の元にある年少者はどこかにゆがみを抱え、やがて大人は激しく糾弾される。
まりぶと麻生の関係のように。
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「ゆとり教育」については6話で山路が子どもたちに話をする場面がある。
ガッツがない、ライバル意識がない、トラブルに対応できない、と、社会に出たらクソミソにけなされるゆとり世代。
でも、いいところもある。
人の足を引っ張らない。
周りに惑わされないでベストを尽くす。
個性を尊重する。
割り算の苦手なダイゴが算数だけ個別に授業を受けることを、
「かわいそうじゃない、特別扱いするのでもない。みんなと一緒に社会に出るための必要な措置」と言う。
最終回は性教育の授業。性差は個体差を際立たせる。「みんな一緒」じゃなくなる。
それは自然で当たり前のこと。
それらを受け容れられる心を持つことの大事さ。
ゆとりのある心を。
人間の凹凸・完ぺきでなさを肯定すること、
失敗できる環境の大切さ、
失敗は時に相当重いけど、その傷を抱えながらでも、人間しぶとく生きていけるよってこと、
クドカン先生のメッセージはさすが、今の社会にぴったり。
失敗しないと成長できないし、行動しないと失敗もしない。
失敗=炎上で完膚なきまでにたたきのめされること、
失敗を恐れて抑圧されて萎縮することが一番かなしいよね。
日本人的絆は無言のうちに同調を強要する。
自己責任の冷たさ、重苦しさ。
そういうものに対するアンチテーゼなドラマだったなと思った。
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