今さらですが、『ゆとりですがなにか』全部見ました。

yutori

最終回のラスト近くで、山路が子どもたちに向かって

「人の失敗を許せる大人になってください」

と言ったとき、ああ!と思った。
そうか。そういうことだったのか。

思えば数々の失敗が描かれてきたのだ、
坂間、山路、まりぶの3人の「ゆとり」たちは。

営業から店舗勤務に飛ばされ。
山岸にパワハラで訴えられ。
まりぶにおっぱいパブでぼったくられ。
悦子先生は「叱られた」「グイグイくるんです」なんてその場その場で都合いいし。
あげく静馬のせいで学校中に童貞をバラされ。
まりぶは植木の職場で暴力沙汰を起こし。
妻子に逃避行を強いて。

自業自得にしろ、とんだとばっちりにせよ、みっともない失敗ばかり。

それと同時に、「失敗を許す」姿も描かれてきた。

山岸を許し。
ぼったくったまりぶを許し。
悦子先生と静馬を許し。
妹をガールズバーで働かせ不倫までしたまりぶを許し。
父親である「レンタルおじさん」麻生を許した。

最終回間近になって、茜が上司と関係を持ち、それを坂間に自ら打ち明ける展開に、
「そりゃねーだろ」と思ったのだけど、だからこそ最後に持ってくるエピソードだったんだ。
大きくて愚かすぎる失敗だからこそ。

課長との関係を告白してしまった茜。
失敗しなかった茜の失敗。
失敗を隠しておくことの難しさ。

坂間にとっては、失敗を許すことの難しさ。
「失敗を許せる大人に」それは簡単なことじゃない。時にものすごく難しい。
悩み苦しむ坂間を見て、茜も苦しむ。
失敗は時に、簡単に許されることじゃない。相手を苦しめる。

一生黙っておいた方が相手への優しさだった。
黙っておけなかったのは、茜の弱さであり、愛かもしれない。
弱さも愛も、それらを丸ごと受け止めるかどうか、坂間は迫られた。

痺れた足で、花嫁衣裳や鬘を脱ぎながら匍匐前進する茜の姿は、
とてつもなくみっともなくて、恥ずかしくて、エロティックだった。
衆人環視の中でさらけ出される失敗。
でも茜はひるまず、叫ぶ。
結婚式という儀式の場をうまくやりこなせず、
でも最後には自らぶっこわして、身も世もなく坂間を求める
(それを待っているまーちん=岡田将生の表情!)。

ようやくたどりついて坂間に抱き留められた茜は、
まるでエクスタシーに達した事後みたいな表情に見えた。
それをみんなが祝福してる。すごくよかった。

坂間も山路も、失敗しても、恥ずかしいめにあっても、職場を辞めなかった。
ただいるだけの人にもならず、なんだかんだずっと一生懸命だった。
これはゆとり世代にとって難しいことだと、一般的にはいわれている。
プツッとやめちゃう。ばっくれちゃう。興味のないことには無気力。
山岸がその最たる例。

序盤の山岸と、自殺した男性のエピソードは強烈だった。

自殺した彼は失敗から立ち直れなかった。
脚本家はそれを本人のせいとも言わないし、直属の上司のせいとも言わない。
ただ環境が彼の失敗を許さなかった。
彼の環境には失敗を許せるゆとりがなかった。

そして、人間は、死んだらもう二度と次の失敗もできない。

「ゆとり世代」であるアラサーの男子3人+茜が中心になりつつ、その上下の世代もくまなく描いていく。

坂間たちの上が、兄の宗貴夫妻。
その上が、早川課長や、山路の小学校の先生たち。
その上が、麻生や、坂間の母や、茜の父。野上さん。
坂間たちの下が、山岸や悦子。
その下が、ゆとりや静馬。

くまなく、足りなかったり、ろくでもない部分を持っている。
彼らもいろいろ失敗をする。
世代関係なし。

ただ、
「上の世代は下の世代に対して良き年長者であれ」
という描き方をしているのが、クドカンらしい善性だなあと思う。

このドラマでは、親は子を、先生は生徒を、兄は妹を、上司は部下を、相応に大事に思い、行動で表す。
それをできない大人の元にある年少者はどこかにゆがみを抱え、やがて大人は激しく糾弾される。
まりぶと麻生の関係のように。

「ゆとり教育」については6話で山路が子どもたちに話をする場面がある。

ガッツがない、ライバル意識がない、トラブルに対応できない、と、社会に出たらクソミソにけなされるゆとり世代。
でも、いいところもある。
人の足を引っ張らない。
周りに惑わされないでベストを尽くす。
個性を尊重する。

割り算の苦手なダイゴが算数だけ個別に授業を受けることを、
「かわいそうじゃない、特別扱いするのでもない。みんなと一緒に社会に出るための必要な措置」と言う。

最終回は性教育の授業。性差は個体差を際立たせる。「みんな一緒」じゃなくなる。
それは自然で当たり前のこと。
それらを受け容れられる心を持つことの大事さ。
ゆとりのある心を。

人間の凹凸・完ぺきでなさを肯定すること、
失敗できる環境の大切さ、
失敗は時に相当重いけど、その傷を抱えながらでも、人間しぶとく生きていけるよってこと、
クドカン先生のメッセージはさすが、今の社会にぴったり。

失敗しないと成長できないし、行動しないと失敗もしない。
失敗=炎上で完膚なきまでにたたきのめされること、
失敗を恐れて抑圧されて萎縮することが一番かなしいよね。

日本人的絆は無言のうちに同調を強要する。
自己責任の冷たさ、重苦しさ。
そういうものに対するアンチテーゼなドラマだったなと思った。





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