アニメーションの神様、その美しき世界【ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映】@KBCシネマ

ユーリー・ノルシュテイン:アニメーションのはるかなる地平線

KBCシネマ北天神は、本当にありがたい。
たった数週間ずつだけど「まだ見ぬ世界」に触れられる映画をたくさん紹介してくれる。

昨日はアニメーションの神様と言われるユーリー・ノルシュテイン監督作品をまとめてみれる機会なので、寒い中、出かけた。
『25日・最初の日』(1968年/9分)
『ケルジェネツの戦い』(1971年/10分)
『キツネとウサギ』(1973年/12分)
『アオサギとツル』(1974年/10分)
『霧の中のハリネズミ』(1975年/10分)
『話の話』(1979年/29分)

 

ロシア人アニメーション監督のユーリー・ノルシュテイン。宮崎駿、高畑勲をはじめとする多くのアニメーターから敬愛されているという触れ込み。
その部分だけ聞くと「ああ、胡散臭いコピー」と思っちゃう偏屈なじいさんだけど(笑)
スタジオジブリのヒット作や、君の名は、なんかがアニメーションだと信じて疑わない人たちに作品を見てもらうには必要なプレゼンかもね。

これまでに国内外で30以上の映画賞を受賞しており、1991年にはフランス芸術文化勲章、2004年には日本政府から旭日小綬章勲章を授与された。1981年からニコライ・ゴーゴリ原作の『外套』の制作に取り組んでいるが、未だ完成に至っていない。

  • 何かを作ろうとしてる人
  • 異国文化を知りたい人
  • 絵本が大好きな人

なんていう幅広いターゲットにもツボるんじゃないかなあという作品群でした。

 

『25日・最初の日』(1968年/9分)

見るからにロシア、ソビエト前衛派的な作りの作品。
赤と、黒とが交差する。アナログなんだろうけどCGのような風合い。ざらついてサカムケしてるコンピュータグラフィックスのよう。

戦争や闘争を「ドタバタ」だと捉えた感じや、それが音楽的。レーニンの演説がサンプリングされてるヒップホップのような感触。

出てくるキャラクターがいかにものマンガ的でキュート。

 

『ケルジェネツの戦い』(1971年/10分)

ロシア聖像画の手法を使い、ケルジェネツ河のほとりで起こったロシアとタタールの戦争と、戦いに巻き込まれた村の様子を描いた。

アナログ感あふれる切り絵(テンペラ画?)のスピーディーな動きに圧倒される。
マスゲームのような人々と、美しい馬。
戦争への思いを「怒り」だけじゃなく少しの笑いと、たくさんの毒とを調合した、ある種のマーヴェルぽさもある。

なんだか、ちょっと笑っちゃうんだ。

 

『キツネとウサギ』(1973年/12分)

樹皮で作ったお家に住むウサギが、氷の家が溶けてしまったキツネに乗っ取られてしまう。
追い出されたウサギがないてると、オオカミ・クマ・ウシなど強そうな動物が

「キツネを追い出そう!」

と手伝ってくれるんだけど…。
鶏が意外な活躍を見せて家を取り戻すというお話。

居座る、居直るキツネに、歯が立たない「大きな動物たち」。なんか、今の世界みたいでわらっちゃう。キャラクターたちがどれも、「可愛いだけじゃない」可愛さ、満載。

この素晴らしい絵が、動くんだよ!!もう、食べたいくらい(笑)

 

『アオサギとツル』(1974年/10分)

うってかわって、恋愛劇。
行ったり来たりで素直になれないツルとアオサギの恋のから騒ぎ。
水墨画ぽさもあったり、花火のシーンが実写もミックスされていて可愛い。
ああ、恋愛て、めんどくさい(笑)
でも美しいシーンのてんこ盛り。

 

『霧の中のハリネズミ』(1975年/10分)

これ、一番好きだった。
ハリネズミは友達のクマと毎晩星を数えてるんだけど、ある時クマのとこに行く途中で、綺麗な白い馬を見つけて

「こんな霧の中で寝ちゃったら、溺れてしまうんじゃ?」

なんて思う。そして霧の中を探検するんだけど…。

霧の中での描写が本当に素晴らしく。ああ、人間にはまだこんな美しい表現ができるんだと、泣きそうだった。

怖がらせるフクロウとか
落し物を探してくれる犬とか、そりゃもう可愛さの極致。

でも主役のハリネズミがさ、なんか、愛おしい。バカで。
途中で川に落ちちゃうんだけど

「ああ、びしょ濡れだ。このまま流れていって、沈んじゃうのかなぁ」

なんていうんだ。ポツポツと。
悲劇を「そんなもんかもな〜」て受け入れる感じが、バカっぽくて可愛い。

このアニメーションの風合いは感じられないだろうけど絵本も出ているようです。ぜひ見てみたい。

『話の話』(1979年/29分)

少年期・戦争・小さきものへのシンパシー。光さす未来。
ノルシュテイン総決算という作風。
あちらこちらにアングラ&シュールさを撒き散らしながらも、「絵が動く」っていうアニメーションの原理をこれほど可愛らしく、面白く、哀愁深く表現した作品は見たことがない。
芸術でもあり、演芸でもあり、子守唄でもある。

 

タンゴのリズムで踊るカップル。戦争が相方を奪ってゆく。戦争が子供を奪ってゆく。
壊れた街を再生し、また壊す。
生まれ来る赤ん坊は成長し旅立つ。

時間の流れを対岸から眺めてるような不思議な感覚に落ちる。

 

ノルシュテインの生誕75周年を記念する今回の特集上映。
オリジナルネガから2Kスキャンニングしたデータをロシアから取り寄せ修復、色調整を施したらしい。
びっくりしたのが音楽というか、音質の良さ。
元の磁気テープからデジタル化し、音響エンジニアのオノセイゲンが修復とマスタリングを行なったそうだ。

オノセイゲンは日本の宝だな。





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