ダゲレオタイプの女:話は展開しない。ケレン味もない。でも・・
黒沢清監督。忍び寄るホラーが得意。
じわじわと迫りくる恐怖とか、不穏な感じとか。
日常の中の狂気とか。
でも、ほぼフランス映画のこの「ダゲレオタイプの女」は、ホラー的なカタルシスは散りばめられていない。
じっくりとゆっくりと、眠たくなる思い空気感。
夜中に見たのでところどころウトウトした。
でも。
目が覚めるシーンが。
99%静かなのはこの一瞬のためかーと思えるくらい。
いつものようにピントの向こうに映る、霊。
でも日本映画のときのように「怖い」感じがなくて、なぜだかノスタルジックな寓話のような、それでいて悲痛。悲しい。
ダゲレオタイプの女:長時間の拘束を妻に、娘に。
ダゲレオタイプ?なんのことだろう。
ダゲレオタイプ(仏: daguerréotype)とは、ルイ・ジャック・マンデ・ダゲールにより発明され、1839年8月19日にフランス学士院で発表された世界初の実用的写真撮影法であり、湿板写真技法が確立するまでの間、最も普及した写真技法。銀メッキをした銅板などを感光材料として使うため、日本語では銀板写真とも呼ばれる。
とにかく露光時間が長く、その間被写体を固定しないといけない。
そこで出てくるのが拘束具。
そのダゲレオタイプの写真家と、新人助手。モデルの娘。
その周辺の数人。
そして、亡くなった妻。
小さな人間関係と、小さな村の日々。
長くてゆるい映画。脚本もどちらかというとつまらない。
でもこれが1時間30分くらいの「見やすい映画」だったら魅力が半減するかもしれない。
ウトウトしたりしながらも、見てしまった僕らの心に、銀板に残されたポジのように深く、はっきりと何かを残す。
ダゲレオタイプの女:海外で映画を撮りたくなる気持ちに満ちてる
日本では5本の指に入るアートとエンターテイメントを両立させることのできる黒沢清監督。
彼が海外で撮りたかった絵が、存分に堪能できる。
韓国、台湾、中国などと比べて「絵ヂカラ」の弱すぎる今の日本映画(ま、くだらない原作の焼き直し映画ばかりだからかも)に腹立たしさを感じてるんじゃないかな。
とにかく画面構成が素晴らしい。
もちろん映画はそれだけじゃダメだと思うけど。
壁
植物
光
階段
石段
土
電線
ダゲレオタイプの女に映し出された静謐な小物、アーキテクト。
圧倒的なコンポジション力。
この映画は、動くことを許されない被写体の話。
僕らも二時間以上、拘束される。
映画は、拘束。
拘束されるのが気持ちいい映画を見たい。
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