まあ、例によって予告編はいまいち本作のおもしろさがわからない作りになってる(笑)
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー:ここだけは負けてない!と思ったら
「成績優秀な優等生」であること。それだけが心の支えだった親友同士の生徒会長エイミー(ケイトリン・デヴァー)とモリー(ビーニー・フェルドスタイン)。
性格ブスだと言われようが「お前ら高校生活が人生のピークじゃん!私はこれから輝く未来があるのよ〜」と思っていた。
ところが卒業前夜、遊んでばかりいたはずの同級生も
「イェール」
「ハーバード」
「Googleに就職」
と輝く未来への進路を歩むことを知る。
「私たち、勉強ばかりして青春を潰してしまった」
二人は失った時間を取り戻すべく卒業パーティーに乗り込むことを決意する。
簡単なあらすじはこれ。
まあ、あらかた想像がつくお話しなんだけど。
その数段植えを転がっていくのがこの映画。
ありきたりなセックスも、青春像もここにはない。
そして「無意味な悪」も。
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー:ヴァギナ、セルフプレジャー、アナル。怒涛の下ネタがさっそうとやってくる
とにかく、高校生活に必須の(!)セルフプレジャーことマスターベーションの話が満載。
下半身の欲望は男の子のものっていう変な固定観念をぶっとばすエピソードとトーク!トーク。
間違えてアナルを愛する、ヴァギナが図書館など、涙なしでは見れない面白さ。
モリーがマスターベーションのおともに使ってるパンダのぬいぐるみのエピソードは腹筋が壊れるよ。
でも下品さが、ないのよ。
生命力にあふれ、自分の体を愛してる。
そこらへんに転がってる「生きていてよかった」的な説教くさい映画を全部燃やしてしまって「ブックスマート」だけ見てればいいって思えるくらい「人生讃歌」が高々と鳴り響く。
気分が落ち込む「悪人」もいない。
高校生活。「憧れる相手」もいるにはいたけど、恋に発展することもなく。
エイミーは太めの体型を気にしながら「大学で輝くこと」を夢見て上から目線だし、とモリーは同性愛をカミングアウトしながらも「自分で何かを決めること」が苦手で、エイミーに頼ってばかり。
二人が憧れてる相手がルックス的に「?」なところもすごくいい。
「ブックスマート=試験に合格したり、有名大学を卒業することでスマートとみなされる」一本槍だった彼女たち二人にパーティーの招待状がくることはなく、自分たちで会場を見つけて行くしかない。
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー:スマートに挟まれるジェンダー感。欲望との付き合い方。許し合う友情、愛情。
パーティーを探していくけど、なかなかお目当てのパーティーにたどり着かない。
超豪華なクルーザーで卒業パーティーを主宰してるけど、ゲストがゼロだったり(厳密みはゼロではなかったけど)
変な演劇かぶれのクラスメイト主催のパーティだったり。
ドラッグを混ぜられ、携帯の充電は切れ、変な(!)ピザ配達にあったり。
テンポよく気持ちよくお話は転がる。
恋は実らなかったり、お節介な人がいたり、ぶっとびのキャラクターがいたり、企画段階で「こんなの楽しいよねー」と思えるパーツが「検閲なし」でスルーされる。
根っこにあるのは「欲望の表現のしかた」と「あたえられたジェンダー感の払拭」だ。
なかでもぶっとんだキャラクター「ジジ」を演じるのが、大好きな「アメリカンホラーストーリー」や「スクリームクイーンズ」のビリーロード。スターウォーズのレイア姫「キャリーフィッシャー」の娘さん。
ジャンキーでふっとんでるんだけど、愛情あふれてて、クレイジーで愛おしい。
とにかくいろんな人種の、いろんな人がいる。
意地悪も言うこともあるし、馬鹿にすることもある。
でもそこに「その人の持つ外見での差別」ってのが少ない気がした。
性格によってぶつかったり、嘘に腹を立てたり、同性からの噂話で傷付いたりはするんだけど。
多種多様な人種や個性を「ただそこにあるもの」として捉えてる。
世界の若い人たちってこうなのかな?そうだったらいいな?
女の子二人の一晩の冒険を描いてるんだけど「女の子ムービー」になってないところも貴重だ。
女の子の映画、大好きなんだけど(笑)
このブックスマートは「男が思う女の子っぽさ」とか「社会が安心する、もしくはヒステリックに反応するであろう女の子像」にまったく縛られていない。とらわれていない。
ある意味革新的で、以降の映画のあり方にも影響があるかもしれない。
監督含めメインのスタッフが「女性」だってのもあるかもしれない。
わかりやすいイケメンもいなけりゃ、かわいこちゃんもいない。
そんなもんに力を借りなくても、キャラクターがリアルなら物語は求心力がある。
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー:これからの理想の世界について
高校にあるのは男性女性と分かれていないジェンダーニュートラルなトイレ。
生徒の姿から見てかなりのお金持ち中産階級でリベラル。
人種やジェンダー、セクシュアリティなどに関して多様なのがあたりまえ。
青春ってのは残酷なリッキズムにさらされる。
多くの青春映画が「白人のスマートな可愛い女性や男性」のものだった時代は終わり、誰もが主役だ。
悪口に関しても見た目や体型ではなく、「堅苦しい性格」を非難する。
ドラッグの影響で「バービー人形」みたいになった「妄想」シーンでも「なにこれ?バランスおかしい!」「お腹の脂肪はどこいったの?」なんていう。
今の自分ではない「理想像」で見られることの嫌悪感も、自分が自分に持つ理想像に「あら!これいいわ」って感じることも描かれてる。
同性愛だろうが異性愛だろうが関係ない。
カミングアウトしたあとの両親のことが描かれていて興味深い。
古い人たちである「親世代」が子供たち「新世代」と理解し合う世の中になるといいな。
登場人物全てが「たぶんこんな感じの子」っていう予想をさせ、それを裏切って進んでいく。
その勢いと、ひとりひとりが愛情を持ってつくられたキャラクターばかりでこれほど「きもちのいい」映画はなかなかない。
人間が、ティーンエイジャーが心に持つ「欲望」や「嫉妬」や「喜び」は描かれているんだけど、ティーンではない人たちからの「理想」だったり思い込みや社会の刷り込みを跳ね除けて成立してる奇跡的に風通しの良い映画。
すべての高校生にみてほしいんだけど、やっぱりKBCシネマでしかあってないんだ。
クラスのほとんどが近隣の日本人で、見た目もほぼおなじ。
同性愛もカミングアウトしにくいだろうし、クラスの人気者は「美しくお金持ちで良い子」だろう。
滅びゆくこの国のイメージにしがみつく学校教育のなされる島国では、この映画こそが「夢物語」なのかもしれない。
2020年。
映画館は瀕死だけど、これほど良質の作品を次々目にする年もあまりないかも。
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