クロキカオリ作【お茶挽】椿亭豆猫:遊郭の舞台裏から~カフェソネス

どちらかというと落語は古典。古くから伝わる文化だし、残ってるものは残るだけの理由があるから。

でも、最近、桂文枝(もと桂三枝さん)の創作落語を聴くことが何度かあって、すごく良かった。
落語っていうなればスタイル。箱。その中に何を入れても落語になるはず。
スタイルはおおいに利用すべきだよね。

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今回落語茶屋ソネスで見た演目「お茶挽」は、ここの主宰クロキカオリさんが作ったものらしい。演じるのは(このいい方がいちばんピッタリくる)椿亭豆猫(酒瀬川真世)。

 

遊郭の舞台裏。というより待合室?

四人の遊女が語るお客のこと、仲間内のうわさ。

お芝居では良くあるシチュエーション。

タランティーノ的な、はたまたシティーボーイズのコント的な雰囲気もある。

 

歯の残っていない年増女

ちょっとゲスなおねえさん

艶っぽいおねえさん

それに憧れるおねえさん

 

一席めも遊郭がらみの噺で、その続編的な流れで上演されるスピンオフ的な楽しみ方もできた。

 

四人の女性がキャラクターを活かしながらしゃべくる展開は、まるで放課後の学校のように騒がしく楽しい。椿亭豆猫の演技力(声色力?)が、文芸マンガのよう。人物が変わると空気が変わる。
艶なおねえさんが話すときは、僕らもシンと息を飲み、おばあさんで笑い、他の二人のときは少し空気が緩む。
そのキャラの出し入れがすごく心地よかった。
女性がやらなきゃできない落語。

女形では、この軽さは出ないかもね。

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遊郭は、借金のかたに売り飛ばされたオンナたちが、芸と性を売って生きていくところ。
日々テクニックを磨き、のしあがり、いい旦那に見受けされることを願う。

 

オンナは商品である。

なんていう言い方があるけれど、割とそうかもしれない。
でもどんな状況でも人は笑いと文化をつくり、ねたみや嫉妬が生まれ、不思議な協調性と集団心理が生まれる。

 

これは現代の男性に置き換えてもおもしろい。

 

いい会社に入るために青春時代を勉強に費やし、大学に入り、社会に出てからは出世レース。上司に好かれ、お客に好かれるためにいろんなテクニックを覚え、使う。
性が売り物になってはいないけど、会社は遊郭。

 

全ての仕事は売春だと誰かが言ってたけど。

 

決定的に違うのは、男性には「身請け」してくれるところがない。
会社を定年まで勤め上げても、それきり。
昔は年金というお給金もあったけど、これからの社会はないだろう。

男たちが次々と路頭に迷う時代がやってくるのかもしれない。

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これからの落語。
路頭に迷った男たちのつぶやきも聞きたいな。
全ての情けなさ、悔しさ、つらさは、ほんのちょっとした事で可笑しく、愛おしいものになる。

 

落語だけではなくて、これからは「感動」だけじゃなく「不感動」を伝えるものがもって出てきてもいいのかな。日々の泡の、はじけるさまはきっと美しい。

 

バスの中から見る景色も

信号待ちの向こう側の人々も

コンビニで列に並ぶときも

不毛な会議であくびをかみ殺すときも

すれ違ったまま丸く収まる夫婦関係も

ひとりぼっちの帰宅も

 

きっと、すてきなお話。





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