リリー・フランキーの遠い星

NHK Eテレに、「スイッチインタビュー達人達」という番組があります。

毎回、ジャンルの違う有名人が2人出て、互いにインタビューし合うのです。
有名人がインタビューされるのはいろんなテレビや雑誌で見られるけど、インタビュー「する」姿って珍しいし、記者やアナウンサーじゃなく、「有名人にインタビューされる姿」も独特で、とても面白い、好きな番組です。

もうだいぶ前になるけど、リリー・フランキーと宮沢りえの回があって。

りえ
宮沢りえは、大好きな女優。大好きな女性。

リリー・フランキーのことはあまりよく知りません。

絵も文章も書けて、役者もやってて、そのどれもが一流なのかといえば疑問だけど、いろいろな場で求められる魅力みたいなものがあるんだろうな・・・て感じ。掴みどころがない人。

 

『ヨルタモリ』で、見事な聞き手ぶりを見せた宮沢りえも、リリーさんのインタビューには多少、苦慮します。

リリーさん曰く、

「(映画)監督に、おまえはいい役者だ、って言われたんです。ちゃんとした役者は、セリフ間違えたら「もう1回やらせてください」って言うけど、おまえは間違えてても監督がOKだしたら涼しい顔して帰っていくから、って」

「ピエール瀧と俺は、蛭子(能収)枠なの。何の責任もないような。お弁当のバランみたいに、なくてもいいけどあったらあったでいいかな、ってやつ」

 

話はとても面白いんだけど、彼がどういう人なのか、相変わらずおぼろげなんです。りえちゃんも「これだけお話したのに、何も聞けていないような気がする」と言います。

するとリリーさん。タイムアップが近づいてきたころの「夢とか目標って、あるんですか?」という質問に対して、すごく面白いことを言ったのです。

 

人間、弱ってるときには、一番手前の幸せにしがみつこうとする。

星って、輝いてる星は、近くにいるから輝いて見えるだけなんですよ。
遠い星は暗い(暗く見える)から、人は憧れない。

一番手前で輝いているものは、一番いぶかしい。人前でキラキラして、「どうも、星でござい」なんて言って。

人は、街灯にたかるブヨのように、明るい方に行きがち。
でも、本当に明るいものは、向こう側(遠く)にある。・・・ていうのは、いつも思います。
そこに着かなくても、そこを目指していれば近づける、って。

 

ちょっと、すごいよね(笑)。

夢や目標を尋ねられて、こういう答えを返す人、なかなかいないよね。しかも50代男性。

これって「志は高く持て」と要約しそうになるけど、なんか全然違うんだわ。

もっと批判的で、だけどロマンチックで、でも具体的なことは何一つ語ってないところがちょっと狡い。いや、具体的なことは特にないんだろうな、とも思える。

 

お酒も飲まずにこんなことカメラの前で話して恥ずかしくないなんて羞恥心ないな、さすが作家だな、
と思う一方で、
さんざん煙に巻いてきて最後にこういう恥ずかしいぐらいな話をするのが、この人の誠実さなのかな、とも思う。

掴みどころがない中で垣間見えたものが、面白かったです。

自分は、どこにあるどんな星を見てるのかな?なんて思ったりしました。

 

sigoto onna(リリーさんが描いたイラストと発言だそうです)

 

あとね、これは日本に限ったことなのかわからないけど、マスコミとかって、遠くの星を無理やり近くまで引きずり出して何なら引きずりおろそうとするからイヤなんだよなー、そっちがわに流れたくないな、とあらためて思った。

ノーベル賞とか金メダルとかとった人の、おちゃめなとことか普通っぽいところを過剰に引き出したがるでしょ。

遠くの星を遠いままで見つめる視力が欲しいものです。

 

ちなみに、インタビュアー・聞き手としてのリリーさんはすばらしかったです。

「(役者としての自分は)積み重ねるんじゃなく、壊したくなってしまう」という宮沢りえに返した言葉。

「スタンダードになり得るものは、最初は必ずアナーキストとして出て来るものですよ。
ビートルズも、チャック・ベリーもピストルズも、そう。出てきたときは、何だこれって言われてた。
最初からスタンダードな顔して出てきた人は、一瞬でいなくなる。」

すんごい高度なテクニックで賛辞してて、こりゃモテるだろうなーと思わされました。





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