スウィング・キッズ:戦争は収容所を生み、収容所は何を生む?
舞台は朝鮮戦争時代。
同じ民族が大国の代理戦争に巻き込まれ分断される、朝鮮人は「現代世界の被害者」だ。
ロシアとアメリカ、はては中国の参戦で、朝鮮半島が互いの面子をかけた代理戦争の舞台となり、何の罪もない人々が容赦なく殺されていく。
ふたつの国に分けられ、「憎み合う」ことを教えられていく。
人が憎み合うことで、得をする者がいるという事実。負けたくないという基本的感情。
知ってるようで語られない「朝鮮戦争」の巨済島捕虜収容所のものがたり。
朝鮮人民軍捕虜15万、中国軍捕虜2万人など、最大17万千人の捕虜が収容されていた。
戦争捕虜となった捕虜は
- 北朝鮮を支持する親共捕虜
- アメリカ寄りの反共捕虜
に分かれて流血衝突が頻繁に発生、共産主義と民主主義の理念を異にした捕虜の戦いが相次いで引き起こされ、多くの死者を出した場所だという。
国の「歴史的恥部」について、これほどエンターテインメントとはっきりとした「ノットイデオロギー」を打ち出した映画を作れる、さらにそれが受け入れられる。これこそが文化的な国じゃないだろうか?
「サニー 永遠の仲間たち」のカン・ヒョンチョル監督作。
劇中にはビートルズやデビッド・ボウイ、ベニー・グッドマンらの名曲の数々が配置され、ダンス映画、音楽映画としても楽しめる作りにはなっている。割とベタなお笑いもあるし、登場人物たちが「ある程度型にはまったキャラクター」なので物語の様子がしやすい。
スウィング・キッズ:アイドルグループぽさ満載の主演は「EXO」のD.O(私は知らない)
主演はK-POPグループ「EXO」のD.O.。スウィングキッズのメンバーは
- 収容所一番のトラブルメイカーロ・ギス
- 4カ国語を駆使する通訳者ヤン・パンネ
- 行方不明になった妻を捜す民間人捕虜のカン・ビョンサム
- ダンスの実力を持ちながら栄養失調の中国人捕虜シャオパン
彼らをまとめ、指導するのが前職はブロードウェイタップダンサーの黒人下士官ジャクソンだ。
スウィング・キッズ:タップダンスにいまひとつ馴染みがないけど
収容所に新しく赴任してきた所長は、対外的イメージアップのために戦争捕虜でダンスチームを結成するプロジェクトを計画する。
リーダーはジャクソン。アメリカでなく、日本へ帰りたい事情を持つジャクソンだけど「アジア人にはタップダンスは無理じゃ?」と消極的。
オーディションをし、バラバラだけどなんとかなるかもしれない4人をメンバーに、タップダンスを教える。
このジャクソン軍曹は黒人、マイノリティー。軍の中でも不当な差別を受けている(ここも重要)。
国籍も皮膚の色もイデオロギーも違う5人は、タップダンスを通じて、次第に絆を深めていく。
闇の取引でタップシューズを手に入れたり、罠にかけられたり。
赤十字訪問の当日、民族衣装で顔を隠してのダンスを披露したり、エピソードがとてもいいテンポで進んでいく。
韓国映画は大好きだけど、俳優の顔が覚えられない、見分けのつかない僕にとって、ちょうどいい感じのアジア人顔とアメリカ顔で(笑)
「このままダンスがどんどん出来上がって、かっこいいダンスシーンで終わったらいいな」
なんて途中で思ってしまう。
陳腐でも、感動のダンス映画で終わってもいいかな?と。
まあ、結局は「希望を持たせて、奈落に落とす」という映画の定石を守るんだけど。
スウィング・キッズ:戦争は何も残さない。全てを奪って、誰も幸せにならない
ロ・ギスは前線の英雄として活躍する兄を持ち、北朝鮮軍捕虜の仲間から一目置かれた存在で「アメリカのダンスに夢中」なんてあるまじきこと。
でも一度夢中になってしまったらもうダンスなしでは生きられない。
「好きだ」と思うことができない。イデオロギーの壁。
実際、この収容所には北朝鮮軍、中国軍をはじめ、「アカ」の疑いをかけられて収容された韓国人も集められていた。
- アメリカ軍に殺されたけたり、家族を殺されたひと(憎悪)
- 共産主義を守ろうとするひと(イデオロギー)
- 共産主義を排除しようとするひと(イデオロギー)
- 収容所での民主主義(的)な洗礼でアメリカになびく人(自由を求める)
収容所のなかでは愛憎が複雑に絡み合っている。
そのなかでダンスは「問答無用」の美しさと強さと楽しさをもち輝いてる。
リズムを取る足、アクロバチックな技。
テクニックの応酬。
ダンス対決は互いに技を出し合い、相手に渡すところが素晴らしい。
自分のターンの次は、相手のターンだ。
おれはこうだ!おまえはどうだ?
自己主張と、相手の尊重。
この見事なバランス。
でも、戦争は違う。
何も残らない。いや、憎悪と悲しみだけが残る。
映画は「あまりにもかなしい結末」へむかってひた走る。
スウィング・キッズ:ビートルズやデビッド・ボウイの曲にまったく「借りてきた感」がないのがすごい
僕の一番好きな映画「汚れた血」のなかでも疾走するシーンで使われる「モダンラブ」。
このスウィングキッズでもまったく同じように使われる。
走り出す!飛ぶ!ダンスする。
全く同じ。
でも、ぜんぜんリメイクくささもなく、「この曲がかかればこうなるよね」と「こんなシーンに流れるべきなのはやっぱこの曲よね」とダブルで納得できる。
シングシングシングはもちろんダンスナンバーのとっておきだから文句なしだけど、
The Beatlesの「free as a bird」がながれるエンドロールなんて「この映画のためにつくられたのでは?」と思ってしまう。
Free as a bird
鳥のように自由
It’s the next best thing to be
それは2番目に素晴らしいもの
Like a homing bird I’ll fly
巣へ戻る鳥のようにぼくは飛ぶ
Whatever happened to The life that we once knew?
かつて私たちになにがあったとしても?
Can we really live without each other?
本当にお互いなしに生きられるの?
サスペンスも、恋愛も、ダンスも、そして悲劇も。
しっかりと治められた傑作。
パラサイトで「韓国映画」に気づいた人も多いから、これからもっともっとたくさん「韓国映画」は見られるだろうな。
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