萠珈(モカ)ワンマンライブ【赤い衣摺れは宵待の合言葉】銀のナイフの冷たさよ

夢ってのは寝て見るものじゃない。
なんていうと「夢は叶えるものだ!」なんていう気持ちの悪い熱血漢を右往左往させる合言葉のようだけど。

萠珈のライブを見に行った。しばらくぶりのドラムレジェンドに。
彼女のステージこそが「起きたまま見る夢」。
対バンのないワンマンは、ことさらそういう香りが高い。

元ネタは江戸川乱歩らしい赤いカーテンがひかれたステージはまるでツインピークス。

この世とあの世
昼と夜
どっちへ行くか迷ったり
どちらがどちらかわからなかったりする時刻の
夢と現実の二叉路
信号は点滅中

どっちにも行けるよ、と囁いているようだ。

 

ナイトメアビフォアクリスマスのジャックがハロウィンを祝う歌が流れる中、いつものようにお友達が待ってるステージに彼女はふらりと現れる

バラエティに富んだ9曲を、ポツポツと話しながら演奏する。
途中、見えないカホンも参加したりして。

初めて聴く曲もあり、おなじみのもあり。
鮮やかなものも、くすんだものも。

彼女の「雑食さ」がよくわかる。
いろんなものに影響を受けて、胸の中に花を咲かせて、その花びらの絞り汁を歌にする。

 

グランジっぽいパワーコードがかっこいい「つまんなーいつまんない」と歌われる判りやすいポップなものや、少年と少女のひと時をすれ違いを歌うもの。
日常的なほころびや、童話の世界の王子様や王女様。

 

萠珈のギター。技術的にはまだまだだけど、独特のリズムと「簡単にはあなたの予想どうりには弾かないよ」っていう気持ち良さがある。
コードやリズムが聞いてる人をふわふわと持ち上げたかと思えば、ストンと落とす。
少女性に共感する同年代や、古いロック好きな親父を取り込む。
ある意味パンクで、ある意味プログレで。
オルタナティブなフォークソングでもある。

 

前に聞いた時は「ああ、バンドでやったらかっこいいだろうな」と思った。
でも今回は「弾き語りならではの自由な展開が、バンドだと『ノリ』だけに変わっちゃうかもしれないな。それは少しもったいないかも」なんて思った。

 

アコースティックギターって、音が大きく出ない。
だからこそ指から血が出るようなジャガジャガも
消え入るようなアルペジオも可能なんだ。まあ、もちろんピックアップで増幅させるんだけど。
アコースティックギターの暴力性と静寂は、やぱり捨てがたいものだと思った。

 

つかみどころがないように見えて、すごく素直でシンプルな楽曲だ。
ぐちゃぐちゃに入れ替わる感情をその都度作品にして、ガラスだなに飾ってる。

自分だけの傷だと思いながらも、それを見せたい。
共感してほしいけど、触らないでほしい。
歌を聴いてほしい。
でも余計な幻想を持たないでほしい。

そんな都合のいいもんじゃないだろうとは判りながらも「その夢」を捨てない。
それが目を開けたまま見る夢だったとしても。

 

離さないで
一人にして

その都合のいい欲望を、きっと誰もが持ってる。
どちらかが叶うから、どちらかが血を流す。

 

めんどくさいもんだ人間て。
あ、でも、人間じゃなくても、そうか。

 

この日聞いた曲の中で

一番大事なのは馴れ合いで
三番目が実力
二番目が我慢で
こだわりはランク外

(聞き取り印象なので少し違うかも)

というワンフレーズが気持ち良かった。

 

月の僕 は名曲だ。
ストリングスアレンジしてみたい。壮大なやつ。
冷たいナイフの感触。と、同時に首筋の血流の暖かさ。

少女と少年 は本当にかわいい傑作。みんなの歌で流してほしい。





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