ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK:今更ドキュメンタリー?と思った。
ビートルズ。もう当たり前すぎるバンド。
ものすごい曲を、ものすごい勢いで作って、あっという間になくなったバンド。
教科書にものってる曲。(ちなみに僕が初めてギターしたい!と思ったのは、中学の友人が「ヘイ・ジュード」を弾き語りしたのを見てから)。
ただ、偉大すぎて(笑)それに、バンドをやっていた高校時分は「パンクロック&めんたいロック全盛期」ビートルズが好き!なんていうのは時代遅れだった。北九州の田舎町では。
ライブはぶっ壊してなんぼ。
スピード上げてなんぼ。
流血してなんぼ。
そんな十代にビートルズは遠すぎた。
ところが、この映画の中のビートルズは「テクニックを叩き上げたパンクバンド」だった。
まさに「時分でやってみる:パンクスピリッツ」溢れる、強靭でナイーブで、でも素直で、探究心に溢れた四人の革命家だった。
ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK:矢面に立つということ
最初の一歩を踏み出す「先駆者たち」のプレッシャーや心の疲弊はどんなものだろう。
もう今は、新しいものを生み出すなんて不可能だから(リミックスだらけの世界だから)想像できないけど。
初めて、自分たちで歌を作り、演奏しながら世界中を回る
初めて、歓声しか聞こえないスタジアムで演奏する
初めて、狂ったような観客に取り囲まれる
初めて、自分の言動が世の中を刺激する
初めて…
どれほどの恐ろしさか。
映画の中の四人は、異世界の扉を開け、時代を変えた。
人種や性別や階級や新旧で分けられていた世界を「音楽」というフルイにかけた。
生まれながらに持ってる色や貨幣価値ではなく「好きか、嫌いか」という主観で人は生きていい。そう示した人たち。
ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK:アートはやってみることから始まる
ごくたまにだけど、自分の演奏が聞こえない環境でプレイする時がある。
本当に、何もできない。
宇宙空間に一人になったんじゃないかと思うくらい。
しかも、その聞こえない音がお客さんに聞こえてる恐怖(笑)
PAもない。でっかいスタジアムで、聞こえない音楽を演奏するつらさって。
「もうやめたい」
すごくよくわかる。音楽が好きで、バンドが好きで、作って、プレイしたいのに。
すごく有名になったおかげで(そりゃもうキリストより)世界は狂信的な味方と、強靭な敵だけになった。
アートという名前の「自己表現」にすがってゆく過程が描かれたこの映画。
やりたいと思ったことを試してみる。否定されてもやってみることかできたのは、やっぱり「グループ」だったからじゃないだろうか。孤独を分かち合い、アートを共作・競作する。
本当に楽しそうだ。
やってみよう!やってみよう!
それを共有できるメンバーが小さな町に集まったなんて、何かの力が加担してるとしか思えない。
ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK:映像が素晴らしくきれいでびっくり。
時系列で進む世の中とバンドがすごくわかりやすくまとめられていた。
バンド映画にありがちな「不仲な部分」「闇の部分」などを掘り下げてなくて、友情と、それから生まれた難物についてのみ描かれている。さすがのロン・ハワードだ。
ビートルズは、もはや歴史だ。
彼らの開けたドアを通ってこなかったミュージシャンはいない。(できれば新しい革新的なことをやってみたかったけど笑)そのことがわかるまで何年もかかるけど。
高校生の姪っ子は、小さな頃からビートルズに夢中だ。
僕はエレキギターをあげた。
アートは自分で作るもの。好き嫌いは自分で決めるもの。
それが自由だ。
それがビートルズというバンドの示したことだと思う。
ラストライブの憂鬱と憔悴をくぐり抜けた男たちのなんと爽やかなことか。
いろいろあっても最後には「楽しい」に着陸することができるんだ。
必死にやれば。
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