MCT:小佐井みなみ:ミュージックシティ天神【あゝ気持ちがいい…】

小佐井みなみ。ミュージックシティ天神2017 ソラリアのステージに立つ

さてさて、一向にサポートギターのお声がかからなくなって「あら、捨てられたかしら?」と、砂に「のの字」を書いていたわけですが。

今日は小佐井みなみのハレの日です。
見に行こっかどーしよっか悩んで(嘘)ダッシュで(笑)

いつもお見かけするお客さんと同じ目線で見る。

大きなステージだ。
なんかドキドキするぞ!

ピカチュウの衣装で出てきた彼女。
おう!一人でどれだけできるか見せてもらおうじゃないか!

と、カメラを持つ。

一曲目にニーナシモーンの「feelin good」をやるという情報を本人から聞いていたので。同じ曲を歌おうと思ってる僕としては「教則本」のつもりで、動画を撮ろうと。

 

一人でできなきゃダメなんですと小佐井みなみは言った。

 

Birds flying high  you know how I feel

 

何度か聞いたことはあった。
でも、ライブハウスの暗がりじゃなく、人が行き交う街中で歌われたこの歌は。
僕をノックダウンした。

 

カメラを持つ手が震えて、体に鳥肌が立つ。
ぞぞぞぞぞ。

「うわ。なんだこれ」

 

小佐井みなみがナンバーワンシンガーだということは僕が一番知ってる!と自負してる。

 

でもね。

 

このところいろんなことが目まぐるしくて、息も絶え絶えで、それでも「夢の尻尾を離したくない時」に彼女の歌を聞いてごらん。

 

ルーベンスの絵の中から黒い天使ニーナシモーンが降りてきたのかと思った。
どんなに言葉を尽くして書いても、彼女はきっと信じないし、「適当なことをまた言ってるわこの人」と思うだけだろうけど。

 

音響が、とか
雑音が、とか
全然関係ない。

あの瞬間、僕が見たのは本物のブルースの黒い天使だった。

 

 

I’m feeling good

 

そのあと、にこりと笑わないでくれ。
ありがとうございました、なんて言わないでくれ、と思った。

僕は体が震えたのを隠すために椅子をたった。

 

 

 

何度かやったマリリンの曲。
今でも僕のギターの方がいいと思う。
でも、違うんだ。
音楽として僕のギターの役割はあると思うんだけど。
彼女は一人で世界と対峙してるんだ。

 

 

僕はショックを隠しきれずエスカレータに乗り、2階へ。

聞き慣れたオリジナル2曲は、清涼感あふれる「新曲のよう」に聞こえた。

 

遠くから小佐井みなみを見てみる。その歌の力がここまで届くのか。

 

二階から見てる人がいた。
知らない振りの人もいる。

音楽は世界に重要ではない。
音楽は人々にとって必要不可欠ではない。

音楽がなくても世界は動く。

 

でも小佐井みなみにとって音楽は。
僕にとって音楽は。
あの場に座って聞いていた人たちにとって音楽は。
とても重要なワンピースだ。

 

 

僕は彼女の経験したことを、ものを、実は少しだけ知ってる。
そこでへたり込むことなく
前を向いて歌い
練習し
練習し
オープンマイクで歌い
薄い金箔を一枚一枚重ねていったことを知ってる。
遠くから見たらそれは金の延べ棒を敷き詰めたステージに見えるかもしれないが。

この間、小佐井みなみが教えてくれたから。

彼女がまっさらな笑顔を見せる理由が、僕の思っていたことと違うということも。

 

 

そして、やり続けることの意義を。
身をもって教えてくれてる。

 

僕もニーナシモーンの「feelin good」を歌いたい。
心の底から「気持ちがいい」と歌いたい。
いろんなものを飲み込んで、歌いたい。

彼女は僕にとって、時々一緒に演奏する「シンガー」から、遠く離れた「目標」になった。

 

僕は52歳。
でも今始めたばかりのこの歌を、薄っぺらい銀紙を毎日毎日敷き詰めて、そしていつか銀色のステージを作り上げよう。

彼女のようには歌えないけど、僕には僕のやり方と、ギターがある。
歌を飲み込んで、何度もこけて、歩き方を覚えて。
60歳になるまでに、絶対この歌の気持ちを表現できるようになってやる。
世の中にたくさんある、歌われゆく大好きな曲を表現できるようになってやる。
そういう毎日を過ごそうと思う。

固く思う。

 

 

友達のこと。
仕事のこと。
病気のこと。
音楽のこと。

いろんなことで苦しんだここ数週間。
いや、もっと長いかも。ここ半年くらいか。

苦しくて苦しくてたまらなかった日々が過ぎた。
今日、あそこでニーナシモーンのではなく、小佐井みなみの「feelin good」を聞いたから。

何年後か。
僕は実感すると思う。

あの日、あの時から変わったんだと。
僕はこの日、小佐井みなみに跪いたのだ、と。
そして彼女の言うことはいつも同じ。

「練習しかないです。」

 





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