フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法:感想【映画のような起承転結のないのがこの世界】

 

フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法:この「真夏の魔法」はいらんかったね

あー。賛否両論、というより好き嫌いがあるやろねぇという映画。

なにせ、子供が出てくる、一見虐待映画だし、未来は全く見えないし、オチも起承転結もないし。
映画の体をなしてないとも言える。

でも、ある意味、「映画」を意識して作られた大傑作とも言えるかな。

フロリダ州にある「ウォルト・ディズニー・ワールド」。
僕の嫌いなネズミ王国の本場、世界最大のテーマパークだ。

その近くを走る国道は、ポップな紫色に塗られた街灯や標識が立つ、まるで映画のセットのようなまち。
夕焼けは美しく、雨上がりには虹もかかる。

その一角の実在のモーテル「マジック・キャッスル(魔法の城)」でのお話。

本作の主人公、シングルマザーのヘイリーと、6歳の娘ムーニーは、この安モーテルの一室に住み込んで生活している。
いわゆるモーテル暮らしだ。ホームレスとは違う。
でも宿泊費は老朽化した安モーテルなのに一日35ドル。(途中45ドルに値上がりするんだけどね)
一般的なアパートの家賃と比べたら高額だよね。一ヶ月10万円超えるから。

でも、アパートが借りれないという現実があるんじゃなかろうか?
アパートに入るには保証人も勤め先もいる。
それが難しくても、なんとか一定期間だけでも家賃払って屋根の下で暮らしたい人がモーテルに集まる。
でもそんな高い家賃払えるわけもない。生活はいつか破綻する。

タトゥーだらけで薬物も使う、盗みもするし売春もするシングルマザーと、口の悪い放火もしちゃう娘の話なんて面白いわけないよね。自己責任が横行する日本では受けないだろうね。

でも、この映画は面白いんだ。
ある視点から見たら。

 

フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法:こんなに愛し愛されてる親子は見たことがない

僕らは大人で、大人の目線でストーリーをみる。
辛い現状を抜け出す努力をする主人公を見たいと思う。

勝手な「努力ポルノ」だ。

でもこの映画は「子供目線」を貫き通してる。
いい子でもない、将来を考えたりもしない。
不安もあるけど、深くはわからない。
そんな「社会的無知」とも言える子供たちが、低い目線から見た世界が描かれてる。

 

盗みも売春も犯罪だ。

でも、それをやるこの親子はとても陽気に見える。
それは子供の前でつらい顔を見せないから。
悪い女、つまりは生きていくための犯罪をするところ、自堕落なところは娘には見せない。
子供と向き合ってる時、お母さんは100%優しいお母さんなんだ。

仲良く楽しく日々は続く。

好奇心から無人の廃墟を放火してしまったるもするけど。

子供の前でこんなに笑うお母さんを見たことないし、見てないけれど「万引き家族」の方が身につまされると思う。
それは大人が作った大人の映画だからだ。
物語を借りてメッセージを投げかける手法だからだ。それも映画の大切な役目だ。

でもここには愚鈍な物語や、姑息なメッセージはない。
ただ「陽気な目線」があるだけだ。だから余計に悲しい。

そして「フロリダ・プロジェクト」には罪も罰もない。犯罪を犯しながら生きるという後ろめたさもない。
それが爽快だ。

子供はお母さんと引き裂かれることが死ぬほど嫌で、お友達にさよならを言いたくない。
いつだって空を見上げてるし、小さな隙間に入り込む。
物乞いまがいのことだって平気だし
法律はそこにはない。

 

フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法:美しいシーンだけでも映画は作れる。芯があれば。

主役のムーニー役の女の子が素晴らしい。
演出が素晴らしいのかもしれん。
どうやったらこんな素晴らしい演技を映像に捉えることができるのだろう??
本当に素晴らしい。

導入部のワクワクする感じ「新しいやつがきたぞ!!」って。
ここに集約されてる。子供が転入生を喜ぶ様がすごく表れてる。
(まあ車に唾を飛ばしながらファッキンワード連発なのにね)

肩を組もうと変なふうに手を引っ張り合う背中のシーンとか

突如現れる鳥のシーンとか

お風呂場での緊張緩和触れるシーンとか

たまらないシーンがたくさん。

 

 

誰にでもお勧めできる映画じゃないし、物語的な作為もない。
でも観るべき映画の一つ。

映画というもがまだ批評や批判の力があり、それを声高くいうのではなくアートとして提示してくれる。
なによりここに映し出される子供の生命力に唖然とする。

いい悪いは自分で決める。
子供のタイフーン並みの楽観主義は、全てをひっくり返してしまう勢いがある。
ラストシーンだって、子供の目から見た世界だとすれば妙に納得だ。

ディズニーワールドは資本主義の豚で、子供たちを救ってはくれないが、「子供でい続ける」場所として描かれているんだと思う。

 

 

 

もちろんこのままで行けば子供も危険な目に合うだろうし、もっと恐ろしい犯罪に手を染めるだろう。
だから警察と社会が介入する。
子供を守るために。

そういうシステムができてる国アメリカ。それは「社会悪は存在するし、社会的弱者は存在する」という大前提を認めてるから成り立つんだと思う。自己責任だけではどうにもならないことがある。

 

 

「フロリダ・プロジェクト」というのはウォルト・ディズニーによるフロリダでのテーマパーク開発計画を指すことばらしい。





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