サスペリア:感想【母性と不安。ダンスと狂騒。意外にもグッとくるアートなホラー】

 

サスペリア:1977ベルリンの不穏な空気につつまれる

「けしてひとりでは見ないでください」なんていうコピーが懐かしいホラー映画「サスペリア」のリメイクがとてもいいという評判を聞いて見にいってきた。

オリジナルのサスペリアは、昔見た時「?????」っていうマークが頭の中を駆け巡って、なんというかエロチックな、それでいて格調高い印象だった。今回のリメイクも基本ラインはそこにあった。

 

冒頭から雨。雨の音がひっきりなしにスクリーンに落ちる。
そして1977年の「ドイツの秋」。テロの季節。ハイジャックに爆弾テロ。
重々しい空気につつまれる。

心理療法士のジョゼフ・クレンペラーの元にパトリシアというかなりイかれた感じの女の子がやってきて「自分がいるバレエ・カンパニーは魔女によって支えられている」という。

明らかに「幻聴・幻覚」な感じで。

この役を演じてるのがクロエグレースモレッツなんだけど、全然わからなかった。
いやはや彼女はすごいね。

 

 

モールスとかキャリーとかの品のいいホラーもできるし。鮮烈な印象を残すシーンなのに、彼女ぽさを全然ださず。後で知って感激やった。

 

舞踏団「マルコス・ダンス・アカデミー」を舞台に、そのダンサーたちと教師たちを巡る「こわいこと」。
最後にドロドロの魔女がでてこなくても、かなり怖い設定よね。

アメリカのオハイオからやってきたダンサーのスージー。
鏡ばりの部屋(この部屋がゆくゆくは・・・・)で音楽もなしにオーディションを受ける。
この主役がダコタ・ジョンソン。
あのしょーもない(笑)マミーポルノ映画に出てた女の子。

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どっちかっていうと「冴えない・田舎臭い」感じだったのに、まあ!かっこいいダンスを踊る。

 

 

サスペリア:ダンスとアートと、ぐっちゃぐちゃの体(笑)

現代舞踏のかっこよさはよくわからなくても、この舞踏団のダンサーたちの「作品」には心を奪われる。

新参者のスージーが主役を踊ることに苛立ったオルガというダンサー。
彼女は失踪した(心理療法士のジョゼフの元へ行った)パトリシアと親しかった。

練習部屋からぬけだしたオルガが、鏡の部屋に閉じ込められて、そこからが「ホラー映画」!
スージーのダンスにあわせて、からだがグッチャグチャにねじまがり、よじれ、叩きつけられる。
いやー!これほど「流血」に頼らない、残虐なシーンは初めて見たかもしれない。
ホラー映画史上に残るかも。
すごい。
痛い(笑)

しかもボキボキのグチャグチャなのにまだ生きてるんよ。

 

ロケ地はどこだろうか?ベルリンかなぁ?舞踏団のビルの美しさ。
壁も、ゆかも、柱も。すごい。

アートっぽい映画ではなくて、徹頭徹尾アートをベースにした映画だ。目の保養になる。
ホラー映画は「裸のお姉さんが殺される」というイベントムービーでもあるけれど、サスペリアは

  • 舞踏
  • アート

を柱に進む「支配と被支配」の映画。

ラスト近くの「民族」というダンスの美しいこと。
かっこいいこと!

 

サスペリア:多数決の政治の世界。

もうひとつの芯は「政治」
ドイツにテロが頻繁におこった時代と、ホロコーストの名残。
人類がそのまんま「悪魔」になったような大虐殺。犠牲になった人たちからくらべると、舞踏団でおこなわれてることなんて「おままごと」程度。

そんな皮肉と悲しみと。

多数決で魔女のリーダーを決めるシーン。
名前を呼ばれ、票を入れる。
少数票は無視される怖さ。
絶対君主のうまれる時。

ベルリンの壁のなかで。
舞踏団の地下室で。

隔離された場所で、専制君主のもと。悪魔のような行為が起きる。

従うものと反抗するもの。

 

 

サスペリア:ティルダスウィントン抜群の存在感

ダコタジョンソンの「生きてる感」とまったく対照的なのが「ティルダスウィントン」のミュータントぽさ。

生きてる感!
ミュータント感!

しかも、この映画では三役!

  1. マルコス・ダンス・カンパニーを牽引するカリスマ振付師、指導者で舞踊団の長老たちと共に禁断の秘密を抱えるマダム・ブラン役
  2. ルッツ・エバースドルフ名義でクレジットされている82歳の男性心理療法士クレンペラー博士役
  3. もうひとつは秘密らしい

マダムブランのかっこよさったら!!
喜びや悲しみなど感情の起伏のなさ。

次のいけにえスージーを「まだ時間が早い」と守ろうとするのはなぜだったんだろう?

肉感的な女性と、ダンスという「生き物としての肉感」があふれだす映画の中で、たったひとり、過去も未来も感じさせず生きてる感がない魔女を演じるティルダスウィントン。

サイコーだった。

 

サスペリア:ラストシーンにぐっとくるホラー(泣ける赦し)

これだけ格闘高く、血しぶきの安売りをせず、ホラーの王道をすすみながら、ラストシーンは感慨深い。

どろどろの「魔女裁判」の目撃者にさせられた医師クレンペラー。
ホロコーストから妻を助けられなかった罪の意識をずっともって生きてきた。
一瞬、まぼろしを見せられておびき出されたりして、ほんとに気の毒。

でも新しい魔女になったスージーがきちんと真実をかたり、そのあとつらい記憶を消してくれます。

「私たちは恥と罪を必要としています。あなた以外は」

戦争、闘争、暴力。
人間のなしてきた全ては恥と罪によってのみ語られるけど、十分苦しんだあなたはそれから解放されるべきだ。という。

ぼくはちょっと泣きそうでした。

 

サスペリア。この映画がアニメショーンや、質の悪い邦画をみにくるシネコンの一番小さな部屋で、それなり座席が埋まったなかで放映されてることの喜び。
劇場で、大音量で見てみてください。

 

あと画家のヒグチユウコが描いたポスター?がそーとー素晴らしいのでここに。

 

【710号室】映画見聞録~映画が大好き~2019

 





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