バーニング 劇場版:感想【韓国映画の一番得意なジャンルで、最高の輝きを見せる大傑作】観てよかった、本当に。

 

バーニング 劇場版:個人は世界の一部じゃない。息苦しい148分

この予告編を見て「これはまちがいない!」と思っていたけど、これほどだとは。
韓国映画はそれほど多く見てないんだけど「なんだこれつまんねー」ってのに当たる確率が低い気がする。まあ、個人の趣向の問題だろうけど。

映画は

  • 物語
  • 映像
  • 音楽

でできてる。そのどれもこれもが素晴らしい。主役の三人はともかく、それ以外の登場人物全てが生きている。
そして148分間、ずっと、息苦しい。

 

 

バーニング 劇場版:あらすじ。さして重要ではないかも。

主人公はアルバイトで生計を立てる小説家志望の青年ジョンス(ユ・アイン)。
こいつがさ、いちいち鈍臭くて(笑)言葉がうまく出ない。タイミングをのがす。見ててほんとに腹がたつので。一瞬たりとも目を離せない。いつか爆発するんじゃないか?という雰囲気を存分に出しながら、爆発しない。
圧倒的に素晴らしい演技。

幼なじみの女性ヘミ(チョン・ジョンソ)。イベントの客寄せのコンパニオンお姉さん。
デパートのイベントで偶然再会。
しかもそのあとすぐ部屋に連れ込まれてセックス。

この冒頭のセックスシーンの素晴らしさ。
人物の上下関係とか、性格とかがきっちり語られるシーン。
こんなにエロティックで目をそらしたくなりながらも、ガン見してしまうセックスが描けるなんてジェラシー。

 

 

ジョンスは、ヘミがアフリカ旅行へ行く間の飼い猫の世話を頼まれる。
猫は姿見せないけど。
餌をやりに行っては彼女のベッドでオナニーして帰るジョンス。
この一連の彼のペルソナが、ほんとリアルに「やりきれなさ」を表してて最高。

「窓から一瞬だけ入る光」

その存在とともに、切なさが増す。

 

 

旅行から戻ったヘミを喜び勇んで空港に迎えにいくジョンス。するとアフリカで知り合ったという謎めいた金持ちの男ベン(スティーブン・ユァン)と一緒だった。がっかり感半端ないよね。
自分はガタガタのぼろいトラックで、ベンはポルシェ。
母親は逃げ、父親は逮捕されて牛の糞尿と暮らしてるジョンスと、遊んでくらしてる「ギャツビー」と。
見てて気分がどよーんと沈む。

 

 

ある日、ベンはヘミと一緒にジョンスの自宅を訪れる。
ジョンスにとっては一番見られたくないのが実家だろうに。
平気でこんなところ連れてくるヘミに頭に来たんだけど。
後で考えたら「もうなくなってしまった自分の実家と、そのご近所さんのジョンスの実家」こそが、失くしてしまった自分の居場所だったのかなあとも思えて、余計悲しくなった。

 

 

ワインを飲んで、大麻を吸って。
夕日が沈むその一瞬を裸で踊るヘミ。
流れてくるのはマイルスの「死刑台のエレベータ」。

何十年かに一回、寒気がするように美しいシーンを映画で見る。
汚れた血のビノシュの前髪とか、ミラーズクロッシングの帽子とか、羊たちの沈黙のレクター登場とか。
そんな「神のシーン」に入るのがこの場面。

顔はほぼ見えない。ほんの少しの凸凹が夕日に晒され、それ以外はシルエット。
裸木の枝枝。

もうね、映画が好きな人はこれ見なきゃ。
ストーリーなんか飛んじゃっても、音楽と映像でこころが震える。

 

そのあとベンは

「僕は時々ビニールハウスを燃やしています」

という秘密を打ち明ける。ビニールハウス??ええ?犯罪でしょ?と聞くジョンス。

 

「この国には役立たずの汚いビニールハウスが多すぎるから、燃やしても誰も気にしないよ」

 

車で去るふたり。
その日を境にヘミと連絡が取れなくなる。
別れ際に言った「男の前で服を脱ぐのは娼婦だ」っていう言葉のせいか・・・と、観客もジュンスも思うのだけど。
ジュンスは、必死で彼女の行方を捜す・・・。

 

ここからがサスペンス。なのであらすじはかかない。

 

バーニング 劇場版:僕らがどうなろうと世界はそのままだ

  • アルバイト生ジュンス
  • 幼馴染ヘミ
  • 謎の男ベン

三人ともこの世界に生きてはいるんだけど。
いなくなったところで何も変わらない。
「あなたと世界はなんの関係もないんだよ」と言われてる気がした。

 

 

ジュンス

母親は昔家を出て、父親はプライドだけは高い堅物で、裁判中。
しかたなく田舎に帰り、酪農を手伝う。

田舎は荒涼とした北の果て。
すぐそばでは北朝鮮の「南への放送」が終始なりひびく。
TVのニュースは「アメリカの幸福が一番」というトランプの演説。若者の失業率の高さについて。
閉塞感。
そして無言電話。誰から??

彼は思ってることを言葉にできない。
えへらえへら笑ってみるだけ。

久しぶりにあった幼馴染は、金持ちのギャツビーに夢中だし。
ただ黙ってパソコンに向かって「なにか」を書き込むだけ。

自分だけで生きていると「負け組」ってことはそこまで感じないけど、比較対象としてベンという「ギャツビー」が現れることで「ああ、自分は底辺の生き物なんだ」ってわかる。

 

ビニールハウスを燃やしてるって聞いた途端、近所のビニールハウスを見て回って、人に声かけられたり、ちょっと燃やしてみたrして「ああ。これじゃ絶対犯人に間違われる」って思ってしまう。
その愚直さがイライラする。

 

ヘミ

借金まみれ。いきなりアフリカへ行く不思議ちゃん。
すぐ脱ぐ。
すぐセックスする。自分ともそうだったなら、あいつともそうに違いない。そう思ってしまう。
楽しいこと、気持ちのいいことを素直に表す純粋さと美しさをもっている。

彼女の話す「リトルハンガー」と「グレートハンガー」のはなし。
お腹が減ったリトルハンガーが、やがて人生に迷うグレートハンガーになる。

そのおどり。
金持ちたちにバカにされて、消費されても、彼女は踊るのが幸せだから平気。
パントマイムでみかんを食べる。
みかんがあるかどうかより、みかんがないということを忘れてみる。
それは、自分の「不足部分」に目をつぶることかもしれない。
目をつぶって、しのぐ。

それはヘミにとって、生きるすべかもしれない。
「死ぬのは怖いけど、最初からなかったかのように消えたい」
そういうの、すごく共鳴する。

 

ベン

正体不明のギャツビー。お金持ちのお友達に囲まれてあくびを咬み殺す。
ヘミの失踪にかかわってること。証拠はない。
戦利品。
お化粧道具。
池に佇む。
いろんな思わせぶりを重ねるけど、確信的なことはない。
彼がこの世にいるかどうかも。

 

 

 

すべてがジュンスの書いた小説かもしれない。
でも、この映画を見てる148分間は、リアルに「犯罪」を隣で見てる気になる。
確信的なことがないまま、もやもやは拡大し、爆発する。

田舎を走るトラック。
異常に長いカット割り。
その長さの中でしか表現できない怖さ。

登場人物の表現が感情的でないからこそ、観客の感情が燃え上がる。
ソフト化されたら持っていたい一本。
見るシーンは限られるけど(笑)

 

 

【710号室】映画見聞録~映画が大好き~2019





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