グリーンブック:散りばめられた全ての要素が映画的に輝く大傑作
人種差別が色濃く残る1960年代、今からたった60年くらい前の話。
黒人天才ピアニストとそのボディガード兼運転手がアメリカ南部を演奏するツアーを通して変わって行く様を描く。
こういう「あらすじを聞いただけでネタバレしそう」な映画は、ほんとうに難しいと思う。
より感動的にしようと空回りしたり、説教くさくなったりするもんだけど(つまり、いい作品かもしれないけど二度は見ないものになる)このグリーンブックは「満点」だ。
人間を真ん中に。時代や風景をその周りに、さらに魅力的なエピソードをちりばめて。
テンポよく、心地よく進んで行く。
ああ、映画っていうのはこういうもんだ。と、ため息がでるくらいの静かな大傑作。
ニューヨークの一流ナイトクラブ「コパカバーナ」で用心棒を務めるトニー・リップ。ガサツで無学なブルックリン生まれのイタリア系移民の子。
扮するのは「ロード・オブ・ザ・リング」で野生的ではあるけどかっこいいビジュアルで知られるヴィゴ・モーテンセン。
まあ、今作では見た目「かっこわるいおっさん」を演じてます。化けてます。
腹は出て、笑いは下品。
最初、そう思う。
でもさ、彼の優しさと、その優しさを作り上げるまでの人生の厳しさがチラチラと見え始めると、ほんとに素敵に見えてくる。
貧乏でも家族を愛してる。
拾ったお守りの石とか、妻への手紙とか。銃とか。ホットドッグ競争とか、質入れする時計とか。
伏線の回収に一生懸命になる「気難しい観客」をも納得させるエピソードの簡潔さ。
彼はすごい。
コルレオーネ家をみるような気持ちになる。
彼をツアーの運転手にスカウトした天才ピアニスト、ドクター・シャーリー。
僕は辛すぎて見てない『ムーンライト』アカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリ。
気品があり、自律し、ピアノがすばらしい。
カーネギー・ホールの上にに住み、ホワイトハウスでも演奏した黒人天才ピアニスト。でも存在するだけで攻撃されるカラード、有色人種。
60年代。ロックンロールのアメリカン・ドリームしか僕らは知らない。
全ての文化、音楽を産んだといってもいいくらいの黒人たち。
クールという言葉は彼らのためにあると思っていた。
でも実際は
- スーツの試着ができない
- 食事ができないレストランがある
- 白人と同じトイレを使えない
などの差別があり、それを地元民たちは「あたりまえ」だと思ってる。
演奏シーンのものすごさ。
そしてクラシック音楽をきく観客達の「乗りのなさ」がすごく面白い。
金持ちの白人達は「自分は進歩的な人間ですよ」とアピールするためだけに黒人のコンサートに足を運ぶ。
それに比べて黒人のブルースクラブでのライブの熱いこと!
グリーンブック:黒人用旅行ガイドブック。もし今「アジア人専用ガイドブック」なんてあったら?
本作のタイトルにもなっている“グリーンブック”は黒人向けの旅行ガイドブック。
1936年から1966年まで刊行されていたという。
アメリカ南部の州では、有色人種の一般公共施設の利用を禁止する“ジム・クロウ法”と呼ばれるものがあった。
ニューヨークの郵便配達員だったヴィクター・H・グリーンが、全米の黒人も利用できるホテルやレストランなどをまとめ、毎年発行していたのがこの“グリーンブック”。
つまり「ソフィスティケートされた差別の象徴」でもある。「ペット同伴可のホテル」なんていうのと同じだ。同じ人間なのに。
世界に出るとアジア人差別は根強くのこってる。
一番悪い席に通されたりする。
でも「ここは使っちゃダメ」って笑顔で言われることはあまりないのでは??
グリーンブック:感情を高ぶらせる人間と人間
トニーはイタリア移民系。仕事もなかなか選べない。いつもカツカツの生活だ。
彼にも彼の怒りがある。
この国で生まれたのに、外国人系というだけでいろんな差別がある。
まるで今の日本のように。
シャーリーは学があり、仕事は一流。でも孤独だ。
家族はいない。
生きてるだけで差別をされる。
しかもそれを笑顔に隠した人たちと握手する。
ふたりとも「外れもの」だ。
だからこそ、この映画は成り立ってるんだと思う。
これが学は低い白人の運転手だったら「おまえの境遇は自己責任だろ」なんて見方になるかもしれない。
差別と戦う、差別に苦しむという「重いテーマ」は、奥深くにねじこんで映画は進む。
声を出して笑えるところもたくさんあるし、演奏シーンは迫力満点。
お客さんが「きっとこうなるだろう」と思う方に話は進んで行くのに、それが全く飽きない。
登場人物のリアリティが「知ってる人たち」の話のような気分にさせる。
ネタは揃った。調理方法はひねりなし。
そんな一番難しい料理を完璧に作り上げたのが「グリーンブック」。
トニーから届く手紙を、妻のドローレスは楽しみにしてる。
彼の全てがわかってる彼女は「洗練されていく手紙」に何を思ったのか?
もちろん「書かれた素敵な文章」が旦那のものでないことはすぐわかるはず。その手紙から伝わるのは「無事に事が進んでる」っていう喜びじゃないかな?
誤字だらけで素直な内容だった手紙が、突然洗練されたロマンチックな内容になった。
トニーがその後コパカナーナの支配人になれたのはこの旅での「教養・教育」のおかげなんじゃないかなと思う。
いろんな映画が好きだけど、いろんなジャンルが好きだけど、こんなに軽く、どっしりと残る映画はそうない。
子供映画ばかりのTジョイで、小さな箱で、公開からだいぶ経った頃でもまあまあ大人のお客さんが入っていたのがとても嬉しかった。
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