イメージの本@KBCシネマ【ジャン=リュック・ゴダール:世界をリミックスして怒りと希望を再構築する】

 

イメージの本:ゴダールの映画はむずかしい?

 

この映画は「世界に対するゴダールの怒りが絵画・映画・文章・音楽によって表現された」っていう紹介をされてる。
予告編をみると、様々なアーカイブの断片と、新たに撮り下ろされた(派手なエフェクトを使った)子供たちや美しい海辺などの映像が収められていて、ナレーションはゴダール本人が担当している。

88歳の爺さんが、このように「初めてフォトショップを触ったような」「初めてスマホを持ったような」躍動感とやりすぎ感に満ちた映像を撮るなんて!しかも聞き取りにくい自身のナレーションを被せてるなんて。

こんな映画を作ることはもしかしたら誰にでもできるかもしれないけど、それを真面目に発表することができるのは多分ジャン=リュック・ゴダールだけじゃないだろうか?

有名な映画のいろんなシーンがハレーションをおこしたように飛んでみえる。
ザクザクと切り取られる。
脈略とか、セオリーがないという「ゴダールというセオリー」に沿って。

 

「これは政治的な映画ですか?」
「NO」

「この作品で原点に戻られた?」
「NO」

「映画は近い将来に失われてしまう?」
「NO」

「私たちのために映画を作り続ける?」
「YES」

たった一週間の上映、しかもKBCシネマ。
ワンチャンスの週末。まあまあ多くのお客さんがいた。
そしていびきをかいて眠る人がいてホッとした。

 

イメージの本:五節に分かれたつぎはぎの中で

指は5本。大陸も五つ。
この映画も5章に分けられてる、なんていうのはきっと思いつきにすぎない。

リメイク、リモデルの意味。
すべては何かのリメイクで、だからこそオリジナルなんだ。
世の中の断片を自分のフィルタリングで再構築することが、僕ら一人一人に与えられた自由で、オリジン。

知らない映画の引用はもはや「新しい映画」だし、ジョースや雨月物語のぶったぎりは「新しい感覚」だ。

僕はゴダールの映画をほぼ知らない。ヒット作を数本見てるくらい。
でもこの「イメージの本」は突出してる。

なにが?

やりたいことと伝えたいことの詰め具合が、だ。

 

ゴダールの映画のサウンドは、音楽が映画見もたらす効果をぶった切る。
タイミングをはずして、フェイドアウトではなくカットアウトされる音楽。
音楽の身からすれば、とても「バカにされた」気分になるかもしれない。

すばらしい作曲家が作ったシンフォニーがサンプリングなんていうかっこいい言葉じゃなく、切った張ったされる。
クライマックスまえにブツッと切られ、また繰り返される。

戦争が繰り返されるのと同じように。
街ががれきになり、高層ビルになるように。

引用はもはや抜粋で、コピーされラフに糊付けされる。大学生の頃にやってたアナログのコラージュ。デジタルでは決して持ち得ない「なんとなくのいたずら感」が蘇る。

盗用?引用?乱用?
やっちまえよ。誰に気にしちゃいないよ。

 

イメージの本:わかりやすいまっすぐなメッセージはもう恥ずかしくない

第5節で描かれるアラブ社会への視線、考察は、いままでの4つと違い、明確に怒ってる。
殺戮は繰り返されるものという大前提を掲げながら、怒りに満ちてる。

アラブは世界の背景でしかない。

だらだらと放置された死体。
爆撃、そしてハレーション。ポルノ。

死が日常だからこそのエロティックな肉体。生命力への憧れかもしれない。

 

  • 我々は誰でも世界的欺瞞の共犯者
  • 戦争は神聖で、だからこそ魅惑的
  • メロディが話声を生む
  • 言葉より行動は常に早い
  • 記号論的に記号化には否認の強要性がある

わかりやすい言葉と、もごもごな説得力で、涙さえあふれそうになる。

 

映画を観た後は頭の中がうっ散らかってしまう。
過去も未来も、わからなくなる。
映画館の暗闇の中からでて、真夏のような太陽に殺されるような感覚(実際そうだった)

極限まで美しくて、物語はない。
コラージュ。
感じるのはこっちの勝手。

ゴダールが誰だかよく知らない僕。もしくは若者。
「イメージの本」をみると、世の中のどこかをすくって切ったり貼ったりしたくなるはず。

戦争。死への恐怖。
詐取。

そんなよのなかにあっても「何一つ望みは叶わなくても、希望は消えない」と言い放つおじいちゃん。
僕はこの日から生まれ変わったような気がする。

54歳にもなってゴダールの映画を封切りで見る。しかも妻と一緒に。
こんな素晴らしい人生を送ってるなんて!

 

 

ゴダールはインタビューで

今日を生きる4分の3の人々は、自分たちの人生を生きる勇気はもっています。しかし多くの場合、想像する勇気はもう持ち合わせていません。

と言ってる。
生き延びるためのテクニックを駆使する勇気だけでなく、想像する勇気を持ち続けたい。
せめて88歳までは。

 

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