永遠に僕のもの:感想【説教臭さもヒステリーもないセクシャルで爽快な青春映画】アルゼンチン犯罪史上最も有名な連続殺人犯

 

永遠に僕のもの:生まれついての泥棒は軽快に踊る

アルゼンチン犯罪史で最も有名な連続殺人犯の少年、カルロス・エデゥアルド・ロブレド・プッチを題材に描かれた、爽快な青春映画。

KBCシネマでチラシを見て、予告編を見て「これはきっと素晴らしく好みの映画だ」と期待値を高くしていったにもかかわらず、「DVDを買って何度も見たい映画」になりました。

映画はほぼ、冒頭でイメージが決まる。
「永遠に僕のもの」は70sのジーンズを履いた男の子が、ふらりと「他人の家」に忍び込むシーンで始まる。恐怖も悪気も、狂気もない。
音楽にあわせてダンスをする。
警報もない。
住人と出くわすこともない。

あ、これはこの子の「主体として感じた現実」を描いてるんだなってわかる。

 

主人公カルリートスのモデルとなったのは、17歳から相棒と手を組み、窃盗、殺人を犯し、当時のアルゼンチン社会に衝撃を与えたカルロス・エデゥアルド・ロブレド・プッチ。
逮捕時に20歳だった彼はその美しいビジュアルから「ブラック・エンジェル」「死の天使」と称された。
ありがちな殺人者のプロファイル(醜く)(大柄な男)とは全く違うことからも大きな話題になった

(現在も終身刑中らしい)

まあ、映画だから事実とは違うんだけど、ほんとに彼の目から見たら「世界はこんなふうに見えたんじゃ?」と思える映画づくりは素晴らしい。

カルリートス役を演じたのは、これがデビュー作となる「ロレンソ・フェロ」

もうね、唇がたまらんのよ。

 

永遠に僕のもの:男性器と唇が汁を垂らす

この映画、脳内おとぎ話なシーンと、男性器のシーン、さらに男とか女とかを超えたセクシャリティが溢れてる。

初めて銃を撃つシーンには、睾丸がうようよと動くし、そそり立った陰茎はダイヤモンドで隠すのが精一杯。ここにモザイクをかけなかった配給会社は賞賛されるべき。

「マリリンモンローみたいだ」

盗みに入った宝石店でイヤリングを試着するカルリートスの美しさよ。
ほんと、モンローみたいだった。

銃を撃つ=射精する

そんなメタファーは使い古されてるけど、「快感」を求めて引き金を引くのに、善悪の区別は邪魔になるよね。

相棒の「ラモン」はこれまたハンサムで、ゲイの美術賞にコックサックさせる。
世界中が「ザ・男」としてもてはやしそうな存在感。

歌って踊って、盗みを働く。

 

永遠に僕のもの:なにが「永遠に僕のもの」なのか?

カルリートスと相棒のラモン。
カルリートスはラモンを「永遠に僕のもの」だと思ってた。
この邦題は「ねじれまがってる」けれど、映画の本質的なところを突いてて、なかなかの味わい。

仲良くなるには、殴りかかるか、殴られるか。

感情的にも肉体的にも近づきたい!と思ったら、そうするしかないのかも。
彼を失いそうになったから、永遠のさよならを選んだのかもしれない。

 

ゲイだとか、そんなこと関係になく「恋」は生まれる。
まるで電気に打たれたかのように。
(実際レイプ犯でもあるわけなので「勃たない」訳ではないだろう)

盗んだものにも特に興味はなく
人を殺しちゃってもとくに感想はなく
でも「もう後戻りできない」ってことは知っていて。
恋がすべての原動力になってる。

彼以外は「僕にものじゃなくてもいい」っていう感じ。
あ、絵画は好きみたいだったね。純粋に。

 

あ、女の子との爽やかなシーンもちょっとだけある。
普通の青春映画のテイストも。
そこと本編がかけ離れてないところが素晴らしい。

 

 

永遠に僕のもの:とにかく犯罪は楽しそう

狂気の沙汰とも言えるだろう「犯罪の連続」

自分で撃ち殺した人を見て「これ、冗談だよ」っていったり
最初の殺人、おじいさんを打った後のシーンは映画史にのこるんじゃないかっていうくらい「狂ってる」

だれも怒鳴らない。
ヒステリックに泣きわめかない。

ほんとうは違ったのかもしれないけど、カルリートスの見る、感じる世界には「ヒステリック」は存在しないんだろう。

宝探しのように、かくれんぼのように盗み、殺し、脱獄する。

全編に流れるロックンロールとあまいポップス。
ダンスのための音楽が彼を踊らせる。

そこに「狂気の演出」がないのが素晴らしい。
時計仕掛けのオレンジとは違うのだ。
説教臭さがないのだ。
そんなことしたら、いつか法で裁かれるぞ!という脅しがない。
普通はその「脅し」があるから観客は安心し、スクリーンの中の犯罪を傍観することができる。

でもこの映画にはそれがない。
ただただ純粋に子供が(彼氏のためってのもあるだろうけど)楽しんで犯罪を犯してる。
その圧倒的なパワーとポジティブなエネルギーがこの映画の「核」だと思う。

 

 

永遠に僕のもの:ミラノ風カツレツが食べたくなる

ママの作った料理が好き。
ほんとうに美味しそうに、幸せそうにカツレツを食べる。
父親にも手を振る。

「3人で旅行に行きましょう」

「いまはそんな余裕はない」

「あ、お金ならあるよ、稼いだんだ」

この雰囲気がすごく好き。

 

善悪じゃないんだ。人の目から見える世界は。

 

 

実際の彼の写真がこちら

ダンスで始まり、ダンスで終わる。
青春はそういうもの。

そのあと延々と「監獄の日々」が待っている。

彼の犯した卑劣な犯罪。その全てを肯定も否定もせず、ただ情熱だけを吸い上げて映画にする。
青春映画の金字塔。

 

おおくの10代は共感しないかもしれないけど、何人かは「救われた気持ち」になるだろう。

 

KBCシネマもおまつりでした。
来場者特典でシールもらった

 

 

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