掃除婦のための手引き書:ルシア・ベルリン:岸本佐知子【俯瞰と肌感が一行ごとに変わる大傑作】

こんばんは。ブログアパート管理人のサニーです。

もうね、近眼と老眼で本もパソコンも読めないんだけど。
メガネを外して顔から10センチくらいのところしか見えない。

よく「短編小説のような歌を書きますね」と言われるけど、僕はほとんど本を読まない。
雑誌は好きだけど。

本屋さんに並んでる本(最近は平積みが嫌韓とかばっかだから見るのも嫌)のなかで、すっと目を引いたモノクロ写真の表紙。
何の気なしにパラパラっとめくってみた。
妻の買い物を待つ間に。

小説も映画も、歌も、イントロでわかることが多いよね。
この「掃除婦のための手引き書」は鮮烈だった。

あまりに風景がわわわっと頭の中に浮かんだので読むのをやめた(笑)

 

掃除婦のための手引書:たった数ページで脳内のスクリーンがフル稼働する

ルシア・ベルリンというひとを知らない。
そもそも作家を知らない。

wikiで調べて見る。

1936年アラスカ生まれ。鉱山技師だった父の仕事の関係で幼少期より北米の鉱山町を転々とし、成長期の大半をチリで過ごす。

このチリでの話もたくさん出てくる。
南米チリの「チリチリと(笑)焼けた大地」とか匂いがページの間からあふれてくる。(いいと思い)にでてくるドーソン先生は頭から離れない。物乞い。真っ黒な体。先生の服。ノーブラノースリブのサンドレス。

 

3回の結婚と離婚を経て4人の息子をシングルマザーとして育てながら、高校教師、掃除婦、電話交換手、看護師などをして働く。

家族の話がいくつもある。
死にゆく妹。子供のこと。父や母。
当事者であるはずなのに、「聞いたはなし」のように事実と距離を置くかと思ったら、急に隣に座って耳元で話しかけるような。
その距離の遠さ、近さに僕ら読者はドキマギする。

ほとんどが「自伝」のようなエピソードでもあり「ルシアベルリンという友人のはなし」に聞こえる話もある。
グラスやカーテン、机の角。
ピンナップが貼られたあと。
文章の中には出てこないディティールを感じる。

 

アルコール依存症に苦しむ。2004年逝去。

ドラッグやアルコールに対する「愛でも憎しみでもない」気持ちが溢れる。
飛んでいく鶴と並列に。
バス通りにならぶ人たちと並列に。

 

 

掃除婦のための手引書:感情と無感情が切り刻まれて配置されている

ト書きで進んでいく小説が苦手。
まずはその人が存在する世界を書いてほしい。
その人の体臭や着てるもの、食べてるもの、住んでる町の空気。
コインランドリー。

この「掃除婦のための手引書」はコインランドリーの話から始まる。
僕らも日常的に使うコインランドリー。でもそこは世界の果て。
この短編集の並び、導入がほんとに素晴らしい。

ぼくらと、かなたの国の風景を繋ぐ。
感情よりも前に。

先にその場所に連れて行ってくれるから、登場人物の感情が突き刺さってくる。
読む人の感情が、読む人そのものが乾いた風に吹かれる。
インディアンの話を聞く。

そのあとルシアベルリンの家族の話も挟まってくる。
その「あっちからこっちへ」いく短編の構成が素晴らしい。
この並びじゃなかったら、もしかしたら「ピンとこなかった」かも。

 

 

この本、今まで読んだ本とは全く違う。
ま、人生全部で100冊くらいしかよんでないかもだけど。

感情と風景がばらばらに切り取られ、余韻のためのわざとの余韻は用意されてない。
すっと置いていかれる。
あっというまに日が沈む感じ。
読者は町に、砂漠に取り残されて、小説の世界を引きずって日常を過ごすことになる。

 

掃除婦のための手引書:結局、岸本佐知子氏の「翻訳文」を読んでいるのだけど

文章のリズム、というか「間」というか。
最初の一ページで「無理だ〜」って思う本がたくさん。話が進まないとか、本から情報を、風景を受け取れない本が多い。
だから読まないのかな(笑)違うな。文字が見えないからだ。

掃除婦のための手引書は「海外の文学」だから、僕らが読むのは翻訳をしてる岸本佐知子氏の文章だ。
英語を読んだとしても、読めたとしてもきっと「本当の意味」は受け取れないはず。

そこを作家の世界を壊さず、僕らに伝えてくれる。
この翻訳文に惹かれてくるかもしれない(笑)

 

なのでここ数年で2〜3冊しか本を買ってない僕が岸本佐知子氏の本を2冊も買った。

  • 話の終わり(リディア・デイヴィス)
  • 楽しい夜(短編セレクト集)

そしてその3冊をすこしずつ混ぜながら交互に読む。
これは僕なりの楽しみ方(笑)

 

 

 

本って、読み始めたら、いつか終わるやん?
それがさみしいから。進行を遅らせるために、まぜこぜで読む。

 

 

風景の切り取り方、感情の漏らし方。
それがとてもクールで、ホットで。

「掃除婦のための手引書」は数ページであまりにも頭と心がいっぱいになるので、「1日1話」って決めたんだけど、無理だった。
まるでアルコールのように。

 

ふだん本を読まないひとにおすすめする。
映画が好きな人におすすめする。
乾いた風と、そこにある情緒を感じる人におすすめする。
負け犬に同情したり、勝ち誇ったりしない人におすすめする。

 

一番好きな小説は「うたかたの日々」、あと「星の王子様」だけど、この「掃除婦のための手引書」はトップスリーにはいりそう。

 

【709号室】ガーリーおじちゃんはまったく役に立たない2019

 





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