ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド:レオナルド・ディカプリオスターがスターを捨てるとき
リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は人気のピークを過ぎたTV俳優。まあディカプリオ自体が旬を過ぎたとは言わないけどもはや「ロミオ」ではない。脚光も焦燥も、そこからの栄光もあっただろう。
そういうディカプリオを知ったうえで見ると、冒頭から涙がちょちょぎれる(笑)
「昔の映画は良かったけど、最近はテレビで盛り上げ役の悪人ばっかだね」
なんて言われてショックを受けるリック。
ここらへんの「悔しさがこみ上げて言葉にならない」感じの完璧さ!
軽蔑してるマカロニウエスタンへの出演で再び浮上すべきか、それとも今は安定してるテレビの単発を続けるか?
そんなリックを支えるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は専属のスタントマン。
付き人的な雑用も、心の支えにもなる。
ハリウッドセレブとはちがい、トレーラーで犬と暮らしてる。
一人での夕食はまずそうなマカロニ(笑)
クリフは強く、いかしてる。
なんにせよ心が荒波に飲まれていない。
昔は猿のような顔だったブラッド・ピットが、まあ、ミスターアメリカのような風貌と、落ち着いた演技。さらにキレッキレのアクションも見せてくれる。
ディカプリオが躁鬱激しいスター(しかも落ち目)を演じ、その影であるスタントマンをブラッド・ピットがやる。
二大スター共演!みたいな立て方はまったくない。
ディカプリオの気分の上がり下がりがまるで自分のことのように感じて(笑)
うまくいかないとグズグズいう。
ちょっと褒められたらすぐ復活する。
でも根拠がないからまた落ち込む。
甘える。
よし!おれはスターだ!やったるで!と自己暗示。
やってのける。
もうね、この「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、ディカプリオが泣かす。笑わせて泣かす。
ほんとによくここまでやったもんだ。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド:シャロン・テート殺害事件の背景にはなにがある?
リックの隣に時代の「ローズマリーの赤ちゃん」で喝采を浴びたロマン・ポランスキー監督と新進の女優シャロン・テート夫妻が越してくる。
旬の輝きを放つ二人。
落ち目のリックはこの輝きにたえられるか?
それともご近所のよしみで映画のセンターステージにカムバック?
シャロン・テートがどんな女優かは知らなかったけどこの事件は興味があっていろいろ調べたことがある。
チャールズマンソンという稀代のカルトをリーダーとしたヒッピーによって、惨殺された女優。
お腹の赤ちゃんともども。
死刑制度がないので終身刑のまま現在も服役中。
この事件がおきたのは1969年。
夢のような60年代は過ぎ、戦争は始まり、社会は根底からゆるいでいた。いい意味でも、悪い意味でも従来のシステムが機能しなくなって、新しい何かに取って代わられようとしてた
- 映画はテレビに
- 軍国はフリーセックスに
- 憧れは憎しみに
さらに公民権運動とか、ウーマンリブとか。
いままでは「撒かれた場所で咲く」だけだったものが自由に飛び散っていく。
自由はもろい。
自由は不安だ。
だから狂信的ななにかに丸め込まれる。そんな時代だった気がする。いまとちょっと似てるかも。
「豪邸に住む新進の女優がヒッピーのカルト集団に惨殺された」という事実だけを頭に入れて見るといい。
マンソンに関してはあまり調べない方がかえって面白いかも。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド:延々とハイウエイを走る「起と承」
リックは豪邸に、クリフは町外れのトレーラーに住んでいる。
この「通勤時間」の描写がやたら長い。
タランティーノのいつものリズムを期待していくと「だらけてる」ような印象。
この「ただ車に乗ってる時間」がとても重要なポイント。
どんどん抜いていく車。大音量のロックンロール。
高揚するはずなのに、なにか不安になる。
「この映画、タランティーノじゃなかったっけ??」
その不安と間延びにイライラする観客こそが思う壺だ。
不安な世界を描くために、観客を強引に不安にさせる。
楽しいアクションや笑えるシーン。古き良き映画へのノスタルジーと愛情。
その間を車はずっと走ってる。
この距離感はふたりの社会的な格差でもある。
主役と影武者との。
いつものように意味のない会話がつづくこともなく
激しいカタルシスを呼ぶアクションもラスト以外はあまりない。
タランティーノは自身の武器である「わるふざけ」をあるタイミングまではしっかりと封印して、「むかしむかしの映画界」を愛情たっぷりに、悲しみを込めて描く。
そこで抑え込まれた観客は、最後に大喜びするんだけど。
ラストに関しては描かない。
これはぜひ劇場で大笑いしながら見ましょう。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド:スター共演のバディムービー
なんだかんだあっても、ブラッド・ピットのかっこよさに痺れまくる。
彼はタキシードよりこの汚れたジーンズが似合う(笑)
贅沢の限りとアルコールでまんまるになったディカプリオとの対比がすごく楽しい。
ディカプリオの涙を誘う名演技もたまらない。心をグッと掴みながら「過剰」じゃない演技って初めて見たかも。
ふたりの中年の、盛りは過ぎた男同士の友情。
文字にすると「だっせ〜〜」のだけど、そのダサさが本当に美しい。
かっこいい事ばかりじゃないけど、信頼と尊敬を持ち続ける。それが人の歴史なんだ。
大人になったスター二人と、輝く場所を作ったおとなのタランティーノ。
あいかわらずサントラの選曲はすばらしく(とくにストーンズのアウトオブタイムと、ヴァニラファッジのキープミーハンギングオンの使い方)映画館の大音量で聞くと体が揺れる。これまでほどマニアックではないところもある(と、思ってしまうのは僕が年寄りだからかも?若い人には全部がマニアックかもね)
タランティーノ自体も、カムバック!かも。
そしてまた、次はこけたりするのかも(笑)
そうそう。
映画はいつもはKBCシネマでみるので、シネコンのお客さんは馴染みが少ない。若い子がたくさん来てた。
本編始まるまで携帯でゲームしてるひとも(笑)。
半数以上の人がポップコーンやドリンクを飲んでる。
上映中、小さな声でおしゃべりをするおんなのこふたりに「静かにしてください」っていうおっさんがいた。
そのふたりは僕のとなりのとなり。
そのおっさんは僕の後ろ。
笑うシーンでわらったり、「あの服かわいくない?」とか言ってるくらい。
全然関係ない話じゃなかった(ような気がする。あまり聞こえなかったから)
シーンとしたシーン(笑)とかじゃないのに。
そこまでするものか?そこまで襟を正して見るものか?
たかがタランティーノの映画だよ。
前の席に足を乗っけて見るべき(笑)じゃないかなぁ。
注意されてから彼女たちは声を出して笑わなくなった。
迷惑な客も多いのは事実だけど、行き過ぎた「品性」は問題だ。
とくにタランティーノの映画では。
周りの人がなんとなく「ノレなくなった」ような気もする。
僕?僕は大笑いして体をガタガタさせたし、かなり泣いてまつげがかゆい。
映画は娯楽だ。
ジャンルにもよるけど。タランティーノの映画は娯楽だ。
もっと騒いでもオッケーよ。
【709号室】ガーリーおじちゃんはまったく役に立たない2019
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