ボーダー 二つの世界:感想【違う種、同じ命。】あっちへいくのか?こっちへとどまるのか?

 

ボーダー 二つの世界:静かな日々、淡々とした毎日を過ごす孤独なティナ

スウェーデンの入国管理局で勤務するティーナ。
その異様な外見から、多くの人は彼女を避けてる、と予告編にはあったけど。
職場では全然普通な描かれ方でほっとする。

目の前を通る人々が隠し持っている違法なものを「羞恥」や「怒り」の匂いを嗅ぎ取り、いとも簡単に突き止めることができた。
彼女が働くのは「水際=ボーダー」でもある。

禁じられているもの、奇異なものが交わらないように防ぐ仕事。

ある日ティーナはメモリーカードに児童ポルノを隠し持った男を空港で呼び止めた。その能力を認められ、彼女は捜査に協力するように依頼される。

彼女は人々から離れた自然に囲まれた家に恋人(?)のローランドと静かに暮らしていた。犬のトレーナーの仕事をするときもあるようだ。
彼らの間に愛情はあるとはおもえないし、性生活もない。
でも酒を飲んでテレビを見てるよな男でも「誰かが家にいてくれること」を欲する彼女にはそれでよかったんだろう。
そう。ヴォーレに会うまでは。

ヴォーレはティーナと同じような奇形の顔をした男。
空港で「匂い」を感じたティナだったが、不審なものは見つからなかった。
ただ、明らかに男性に見えたヴォーレに男性器がなく、女性器があったこと以外は。

 

 

 

ボーダー 二つの世界:特殊メイクであぶり出されるのは心の奥底

『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作者ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストによる短編小説を、新鋭アリ・アッバシ監督が映画化した北欧ミステリー。第71回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門でグランプリを獲得したほか、本国スウェーデンのアカデミー賞で最多6部門の受賞を果たした。

ぼくのエリは本当に素晴らしい映画だった。
社会と、社会から阻害された人間と、そもそも社会の枠にはいれない異形のものと。
グループが異端を生み出すってこととか。

この映画も基本的には同じ。

一般人とか、ぼくら人類とか、自己の種を「メジャーなもの」として語る危険性とか。

 

 

このすばらしい特殊メイクがあぶりだすのは、恐怖や愛情、不安、安心、悲しみ、爽快感。
見慣れた人間の顔でないからこそ「感情の変化」がみてとれる。
笑顔が、憎しみが記号化される前の表情として伝わる。

たとえばヴォーレは、「あぁ」と声にならない声で笑う。
気落ち悪いとしか感じられなかったけど、優しい男に感じらえるようになる。

虫を食べる。
気持ち悪い。
異形な性描写、気持ち悪い。
半開きの口からこぼれる声。気持ち悪い。

でも、それは僕らから見たときの印象。
違う種族なら、それが当たり前。

 

人に危害を加えられた記憶のあるものは、人に危害を与えることに罪悪感をもたない。
直接的に記憶のないティーナが、真実を知ってこれから以降の人生をどう生きるか?
とても興味深い。

 

ボーダー 二つの世界:うつくしく、湿気を含んだ重たい空気

ティーナやヴォーレは明らかに僕らとちがう。
そのことは序盤でわかる。

それどうやって観客の「体の奥まで」染み込ませるか?
ここがストーリーテリングと、演技だ。

主役の二人

ティーナ役のエヴァ・メランデル
ヴォーレ役のエーロ・ミロノフ

どちらも自分の顔がわからないくらいの特殊メイク(4時間かけてメイクするらしい)で、演じる。
立ち姿。
腕の落ち方。
首の傾げかた、匂いを嗅ぐ音。
唸る顔。

ほんとうにこういう人をキャスティングしたんじゃないかというくらいだ。
特殊メイク賞というのがあるなら「被特殊メイク賞」というのがあってもいいと思うくらいだ。

森をかける爽快感には、暗闇の映画館の中のぼくらも笑顔になる。

森の中での動物たちのとふれあいは、心がやわらぐ。

雷のシーンはドキドキする。

現代版ファンタジー、ホラー、人間ドラマ。
簡単なジャンル分けを嫌う、ストイックな映画には、持てる体の全てを使う役者が必要だ。

 

 

ボーダー 二つの世界:あなたは、私は?どちらの世界へ?どちらの世界から?

僕ら人間は、種族はおおざっぱにいえば同じだけど、枝葉の部分ではいろんなミクスチャーだ。
アジア人、欧米人、インド人など。
血は混ざって、ボーダーはわかりづらくなってるけど

貧富の差というボーダーは、どんどん僕らを分断する。

貧しきものと富めるものは違いに「あちら側へいくことはない」と思い込んでる。
貧困はもはや、種族の違いとも言えるような気がする。

ティーナとヴォーレは、僕らと違う種族で、でもぼくらの世界でひっそりと生きてる。
僕らは違う種族の生き物を「研究」し「理解」しようとして、狩る。
違いを明らかにし、「反逆」を抑えるために。

よく似てないか?いまの世界に。

 

悲しいエンディングへ向けて進む物語は、最後の最後に、とても柔らかな気持ちにしてくれる。
それが「血で血を洗う復讐劇」の始まりだとしても。

 

原題 GRÄNS
製作年 2018年
製作国 スウェーデン=デンマーク
配給 キノフィルムズ
上映時間 110分

 

【710号室】映画見聞録~映画が大好き~2019





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