コーヒーをめぐる冒険:感想【モノクローム、コーヒーといえばジム・ジャームッシュだけど】ドイツ、ベルリンの街の小さなあかり達

コーヒーをめぐる冒険:タイトルの村上春樹感が「嫌な感じ」ではあったけど

何もすることがない週末には、小さなテレビでAmazonプライムビデオを見るに限る。
マッチョな気持ち悪い芸人をスルーして、映画を探す。
ここではないどこかにつれていってくれる映画を。

2年前に大学を辞めてから、ベルリンでただ“考える”日々を送っているニコ。
親にはやめたことを言ってなく、仕送りを続けてもらいながらぶらぶら過ごしてる。

ある朝、恋人の部屋でコーヒーを飲み損ねる。
ルーティンではないしろ、「予定」が狂うことでそこから「まったくついていない1日」になっちゃうことってあるよね。

モノクロの画面。
感じの悪い男の子。こんな感じの友達がいたな〜。誰だったか忘れたけど。

映画学校「ドイツ映画テレビ・アカデミー(DFFB)」の卒業作品として発表され、本国ドイツをはじめ、海外でヒットを飛ばし、ドイツ版アカデミー賞で作品賞や監督賞を受賞したっていうこの作品は「学生時代」にグズグズ自分探しなんかしちゃって青春を謳歌しなかった人(まさに!僕だ)にぴったりの「なにものでもない人の映画」だ。
と同時に、ドイツという国の歴史とか、風土とかに愛情を感じる「ご当地」映画にもなってる。

ジムジャームッシュやウディアレン「のような」映画は腐るほどあって、模倣が過ぎることがある。
宣伝文句も「○○のジャームッシュ」とか煽るから、がっかり感もすごい。

でもこの「コーヒーをめぐる冒険」はとってもよくできた映画だった。
評価が分かれるのは、1938年11月9日夜から10日未明にかけてドイツの各地で発生したユダヤ人商店街を襲撃した「水晶の夜」を知ってるかどうかにあるかも。

 

コーヒーをめぐる冒険:次々に出会っていく人をちょっとだけ

1)彼女

彼女は予定をたてて、その通りに行動するタイプ。
ニコがなんとなくイラつくのもわかる(笑)
そういう計画通りの日々じゃない毎日をニコは過ごしたいんだろうなぁ。
朝のコーヒーを飲む前に、彼女は腹を立て、ニコは出ていく

2)免許停止

飲酒運転で没収されたのだろう免許証。
カウンセラーとの面接日が今日であったことに気付いて、あわてて電車にのる。
遅刻してきたニコを面接したカウンセラーはイライラしてる。
彼自身の問題か?それともニコの「いいかげんな生き方」がイラつかせるのか?
「君は情緒不安定だから免許証は返せない」という結論に

3)コーヒショップ

お金があまりないけど、コーヒーは飲みたい。
コーヒーショップで「ふつうのコーヒー」を頼むんだけど、いちいち絡んでくるハイな店員。こういう人苦手だわ。
結局高いコーヒーを買わされそうになる。お金ないので諦める。
ここで「安い珈琲くれ」と言えないところもニコのどうしようもないところでもあり、この年代のどうしようもないところでもある。
コーヒーを買えなかった小銭をホームレスの空き缶にいれ、ATMでお金を引き出そうとするとカードが吸い込まれた。

4)アパートの上の階の住人

アパートに帰ると、男がちらちら見てる。
無視して部屋に入ると呼び鈴が。上の階の住人だ。
奥さんが作ったという「クソマズそうなミートボール」を山のように持ってきて、家での不満ごと。セックスレスの悩みなどを打ち明ける。とてもめんどくさい。
でも上手く交わすこともできず。
イライラがつのる。

こんなふうに、自分探しの「モラトリアム」を過ごそうとするニコにいろんな人が絡んでくる。
物語の核になる出会いはこの後だけど。
Amazonプライムで見れるから是非見て欲しい。(ほかでもきっと無料で見れるはず)

 

 

コーヒーをめぐる冒険:ドイツという国の過去と現在、未来

  • 「肥満だった過去」にとらわれた女
  • 「ナチスの時代、少年だった」男

この二人との絡みが、この映画を「甘いコーヒー牛乳」でなく「苦いブラックコーヒー」に仕上げてる。

苦しい過去は決して消えない。
乗り越えようとしても。
普段は忘れたフリをしていても。

ニコのいい加減さに苦笑し、友人達の馬鹿さ加減に笑い、巻き込まれるトラブルに笑い、映画を楽しんでいるところに不意に撃ち込まれる「過去の呪いに取り憑かれた人」の話。

ああ、こいうふうにきちんと過去を描くことが、現在の焦燥感をリアルに炙り出すんだなあと感心した。
「抜くエピソード」と「込めるエピソード」の並びがすばらしい。

「太っていた」時代に、いじめられた。
その同級生と会うことで「変わった自分を認めさせる」圧をかけてくる。
エキセントリックで、怖い。
肉体を駆使する舞台芸術をやっているのも復讐に違いない。

「水晶の夜」に石を投げて商店街のガラスを割った男
何十年もこの街を離れて生きてきた。
こみ上げる思いをニコに話す。
ただ、バーカウンターで話すだけなのにものすごい迫力。
砕け散ったガラスが見えるようだ。

 

 

過去の精算と簡単にいうけど、過去は呪いとなってその人の人生を覆う。

きっとベルリンという街は人類にとっても特別なんだと思う。
街のシンボルであるテレビ塔、かつて東西を隔てたフリードリヒ通り駅と壁の痕跡。落書き。
ルーリードやボウイの描くベルリンに憧れを持つ人は多いだろうし、僕もそう。
戦争、分断、命の喪失。
悲しくつらい過去が詰まって入るけど、そこから「未来」は始まる。
弱々しい新芽はいつか太く大きくなる。

様々なトラブル(自己責任も、そうでないものも)に襲われながら一晩を明かし、ようやく飲んだ一杯のコーヒー。
どんな味がしたんだろう。

 

僕らが生きる「現在」は、過去、第二次世界大戦を知らずしてはその形を正確に把握できないと思ってる。
どんな青春も、街の香りも。
その当時を知る人がほぼいなくなっている今こそ「カタルシスや悲劇としての戦争」でなく「僕たちの過去としての戦争」をずっと描き続けるべき。
自国の戦争はきつくて直視できないときは、外国映画で描かれた「戦争」をみるのもいいと思う。

 

 

【802号室】映画見聞録〜映画が大好き〜2020





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