東京巡礼《夏コミC88》第3幕:浅草演芸ホールで寄席を見る(そのまえに)

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わずか三日という限られた時間を有効活用するため、こうして早起きして浅草まで来たのはいいものの、今日の最大の目的、浅草演芸ホールでの寄席は10時開演となっているため、あと2時間近くも暇がある。

しかし、前回も書いたように余計なことにつかえるお金がほとんどないため、食い歩きなんかもできないわけだ。

 

とりあえず浅草に来たのだから、無料でいけるところと言えば浅草寺などの寺巡りが妥当なところだろう。

そう判断した僕はあてもなくフラフラと浅草寺の方角へ向かって歩き出した。

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まだ8時前後のため、観光客の姿もまばらで、非常に静かな浅草を練り歩く。

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ふと空を見上げれば朝起きたときの曇り空はもうどこにもなく、快晴と呼べるほどの青空であった。

雨が降ると予報されていたが、この天気では雨になることもないな。とバックから少しはみ出している傘を軽く見ながらそう判断する。

 

そういえば、皆さんはある都市伝説が存在するのをご存知だろうか。

 

曰く 人の欲望は天候をも変化させる。

 

かっこよくいってみたが、なんてことはない。このお盆の時期、正確には夏コミという僕らの祭典、いな聖戦がある日には雨が降ったことがない、あるいは降っていたはずなのにコミケ会場目前で雨雲が消滅するという都市伝説である。

 

実際、僕が到着した14日の夜には雨が降っていた東京だが、コミケの当日正確には昼頃には雨が降ってなかったそうだ。

 

大体一日に20万人前後の人が訪れるコミケ。20万人の体温とエネルギーが雲を押し返す結界を作り上げているのだとしたら・・・それはやはりすごいことなのだろう。

 

なんて下らないことをポヤポヤと考えながら歩き回っていると、雷門の近く、浅草寺のメインストリートとでも呼ぶべき大通りにまで出てきてしまった。

 

とりあえず、お店を冷やかしながら時間でもつぶそうかと思い、見渡してみたものの、どこのお店もシャッターが降りており、それどころではなかった。

まあ観光客相手に商売をしているのだから、人がいない時間に開けてもしょうがない。

ちょっと残念に思いながらも、気を取り直して、またあとで来ることにしようと思い、再びあてどなくフラフラと歩きだす僕。

 

基本的に浅草と言えば雷門から本殿(と呼ぶべきかどうかわからないが)までの一本道だけしか思い浮かべない人は結構多いと思う。

 

当たり前だが実際は全然違う。

大きなお寺の隣にもいろいろなお地蔵さまやらがたっているし、裏道に行けば、なぜここに置いてあるのかわからない踏切の信号機が道の脇にポツンと置かれていたりする。

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僕のような地方人からしてみれば、東京なんてすべての土地にビルが立ち並んでいて、どこもここも近代的な街並みだとばかり思っていたが、このような、古い町並みも残っていることに驚きを隠せなかった。きっと海外の人たちが浅草にくるのも同じような理由なのだろう。

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さて、ようやく9時を超え、浅草寺にも観光客が集まり始めたころ、僕はもう一度浅草寺に向かっていた。

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ただ目的は先ほどのお店巡りのため、というわけではなく、先ほど本堂に入ってお参り&おみくじを引くのを忘れていたからだ。

(僕は実は結構ご利益とかを信じるタイプの人間なのだ。)

 

念入りに手を合わせ、いろいろなことを神にお願いしておき、さあ、東京初の運試し。

 

結果は・・・・「吉」

何とも言えぬ結果であったが、書かれていることはかなりよさげな内容ばかりであった。

 

簡単に言えば

ずっと暗雲立ち込めていた生活を送ってきたようですがもう大丈夫、ようやく幸運があなたのもとにやってきて心配事がなくなりいい結果を得るでしょう(信心深ければの話だけど!!)

 

みたいな内容だった。

 

吉でこれなら大吉とかどのくらいいい言葉書かれているのかも気になったが、とりあえず凶とかではなかったことに安堵し、本殿を出ようとしたところ、突然ガッシャーン!!と大きな音がした。何事かと思い振り返ると、音の発生源にはたぶん50代くらいの怪しい感じの男性が何かを乱暴に扱ったのだろう、イライラしながら今にも暴れそうな雰囲気を醸し出していた。

 

すぐに駆けつけた警備員をみてそそくさと立ち去って行った、その男だったが、僕の真横でそれを見ていた家族に連れられていた女の子がぽつりと

 

「こんなところであんなことしてたら天罰がおちるよ」

とつぶやいていた。

 

僕はこれを聞いて驚きを隠せなかった。

そんな冷静なことを小学生くらいの女の子が言ったことにも驚きだったが、それ以上に、神様から落とされる罰、というものをしっかりと認識していたことに驚いたのだ。

 

最近の若い人たちはお天道様という概念が理解できない、なんて賢しらぶった大人が言っていたが、実際はどうだ、神をも恐れぬ所業をしているのは大人のほうで、神様というものの概念を理解しているのは子供の心ではないか。

わけもわからないがなんとなく気分がよくなった僕は少し軽い足取りで浅草寺の階段を下り、そのまま浅草演芸ホールへ歩いていくのだった。

 

浅草演芸ホールの開演時間は確か11時だったな・・・

(現在時刻9:40)

 

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僕は初めての場所に行く際、基本的に道に迷ってうろうろする時間も加味して行動することが多い。最近はスマホのマップがあればそうそう道に迷うことはないけれど、マップが常に正しいとは限らない。

 

ただ今回は道に迷うことなくすぐにホールについてしまった。
と。僕は驚愕の光景を目にすることになる。

 

開演まで1時間以上あるというのに、もうすでに並んでいる人たちがいるのだ。

 

並ぶにしてもずいぶん気が早いものだな、おじいさん方。と思い今日の出演者一覧が前に飾ってあったのでそれを軽く眺めてみる。

 

!!!

 

なんと、笑点の大喜利メンバーの一人である木久扇さんが登場するではないか。

 

僕は笑点の大喜利が大好きでたまらないのだ。

一番好きなのは圓楽さんだが、ほかのメンバーも独特の個性あふれるメンバーのため、見ていて飽きが来ないのだ。

 

他にも、ベテランと言われるような漫才芸人なども多く出演するようで、豪華キャストとと言わざるを得ないほどに豪華なラインナップである。

 

どうやら8月の中旬あたりには特別公演らしく、これはいい時期にこれたものだ、自らの運の良さに喜びながら、おじいさんたちの後ろの並ぼうかと思い、ふと先頭を見てみれば、「前売り券をお持ちの方はこちら」と書いてあるではないか。

 

なるほど、この人たちは常連であり、前売りをかって見る人たちなんだな。では、前売り券を買ってない人たちはどうすればよいのだろうか。

 

と、売り場のほうを見渡せば、そちらには2,3人が並んでいる列がある。

 

こちらが当日券の売り待ちの列なのだな、と思いそちらに並んでじっと待つ。ただ前に並んでいる人たちはどちらかというと大学生くらいの年齢の男性たちで、落語を聞きに来るような見た目ではなかった。まあ、僕も人のことは言えないか、コミケ二日目よりも落語を優先する男、それが僕だ。

 

それからじっと待ち続けること1時間弱。

 

照りつける太陽が猛威を振るい始め、僕の後ろにもだいぶん行列が並び始めたころ、ようやく開場。

 

どうやら席は基本的に全席自由らしく、早いもの勝ちらしい。
なるほど、だからみんなあんなに早くから並んでいたのか。

 

そんなことも知らなかった僕だったが、当日券3番目に買えたため、比較的いいポジションの席を手に入れることができた。

 

さあ、あとは本日のメインイベントが始まるのを待つだけだ。

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