ケイ・クマガワとロレイン・ディスコ・スペシャル《天使の夜:ロックンロールに犯されるOLたち》

仕事を終えて、博多駅から地下鉄に乗って、天神へ。
普段は交通機関をつかわないので、雨の日はやだ。

地下鉄も、バスも、悪意と倦怠に満ちている。

この中で培養されて、でも自分をしっかりもって二本の足で立っている社会人の皆さんはほんと、すごい。

そりゃ自転車やバイクも、車に幅寄せされたりいろんな悪意には出会うけど、そんなときはボディにいっぱつ、凹むくらいのキックをくれてやることができるし。

でも移動する箱の中では逃げられない。

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強風にあおられながら、足元びしゃびしゃでKINGBEEというバーにいくと、

まだだれも来ていないなかケイ・クマガワとロレインはいた。

どこに行っても憶えられないし、まったく特徴のない市井の人である僕は、マスターの大場さんにどーもーって感じであいさつすると「にゃん亭でライブしてましたよね?」って。

すごい記憶力。

 

ロレイン君は「あーあー思い出した。あの女ボーカルのバンドの」てな感じで。

ケイ・クマガワはライブ前のナーバスタイムなのに、あいさつをしてくれた。

 

ぽつぽつとお客さんが集まりはじめた。

おしゃれでキレイな女性がゾロゾロ。アルコール&シガレッツの舞台装置のなか、ケイ・クマガワのライブは始まった。

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エレキギター。
最近はフェンダーのムスタングをひいてるみたい。
チューニングやギタートラブルもあったけどうまく乗りこなして。
外見そのままのハードでロマンティックな歌を漂わせた。
しゃがれた声とひしゃげたギターで。

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女の子たちはケイ・クマガワの
やらせろ!ぬかせろ!フェラしてくれ!の行間からあふれる肌触りの良い孤独にからめとられ、癒されている。

白目をむいたケイ・クマガワはインフォマニアックのよう。
50分弱のライブ。たっぷりと恍惚感と酩酊のトリップ。

ステージ横のテーブルのポインセチアのうそ臭い赤と
真っ暗な足元からひろがる宇宙をしたがえていた。

 

ロレイン・ディスコ・スペシャルの弾くファイヤーバードは、ほんと素晴らしい。

ジャズを解体し、ドリーミーなポップスのコーティングで、曲芸じみた演奏をする。
スイートジーンビンセント直径のスイング感と、ピッキングの切れや這い回る指は、一見の価値がある。軍服のユニフォームとメイクで奇異に見られるかもしれないが、あれは油断させるテクニックだ。

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楽曲が砂の山だとしたら、それをぶち壊して演奏していく。
ギターフレーズがたまらなくかっこいい。

ビルの6階でやろうが、広い会場でやろうがテント小屋のショーに見える。

 

 

彼らのイケメンぶり、ロックンロールぶりはほんとに羨ましい限り。
邪悪な甘さと、ヒリヒリする優しさで、おんなのこをトリコにする。
薄暗い部屋で、きっと彼女たちは脳内で芳しき交尾をする。

一日がんばって、ここにたどり着いたのだから。
引き裂かれ、癒される権利がある。

 

 

夜をこんなふうにプレゼンできたら
夜をこんなふうに過ごせたら
そんな思いが重なったバー。

美しい男が、女の子を癒すバー。
音楽はペッティング。脳内にどれだけインサートできるかを賭けて。

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ぼくにはできないことだけど、
ぼくにも人を癒せるのだろうか。

 

みんなが知ってる名曲カバーや
憩いのMCでなく

オリジナルな刻み方で。





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