世界のへそ

亜細亜の何処かのお話。

陽気な太陽の下と褐色の肌。
そんな雰囲気。

色白の少女が居た。
日陰を好むから、外出もしないから、少女は白くなるばかり。

『少しばかり旅に出よう』

お外に出て待ち受けていたのは驚き。
陽気な太陽が、陽気だと思っていた太陽が、日陰より暗いのだ。

綺麗だと思っていた川のそばは湿地帯、じめじめきのこが生えている。
旅に出る前からショックを隠せない。

『何が異常で何が正常?』

―籠ってるあたしがおかしいんじゃなかったのか―

あぁ、どうやら世界は少女が思っている以上に深刻のようだ。

1つしかない楽器を背負って
もっと色んな世界を見てこようと
暗い太陽の下を歩いて
じめじめきのこに挨拶して
裸足のまま
旅の一歩を踏み出した。

『三日月が淀んでる』

『葉っぱがこんなにも尖ってる‥‥』

棘、刄、礫、狂気、闇、どろりと泥濘に足を取られそうになる。
少女は倒れない。

声があるから
唄があるから
楽器があるから

―生きてるから―
少女は唄う、心を唄う
少しばかりのほんの小さな旅

闇の中で光を見付けた。
『大丈夫、世界はまだ終わってない』
今日も何処かで少女は唄う、1つの楽器と自分の声で。

旅で見付けた温かさは、色白の少女の左足に小さく刻まれた。

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