どことなくマンガっぽいなあと思っていたら、やっぱりマンガ原作のよう。少し残念。
でも、映画はきちんとした起承転結、わかりやすいシーン構成。編集のよさ。ていねいに作られた日本映画という感じが漂っていて、いい気持ちになる。
これは「繕い」「裁つ」という、文化や仕事、伝統、個人スキルを「守ったり、新しくしたり」する戦いの記録。
先代から受け継いだものと、新しく代えるもの。
やるべきだと信じてることと、やりたいこととの差異。ずれ。
情熱の目覚めについての物語。
中谷美紀は女優の風格。軽く、ときにシックに、心迷い、淡々とした日々をグツグツとしたマグマを抱えて生きてる主人公を演じる。
映画に映りこむ服。服。服。
気品とユーモア、華やかな夢のような服。
洋裁店におかれたミシン、扉、お茶、大きな作業台。
どっしりと美しい。
まわりの俳優たちもやるべき仕事をきちんとやってる。監督スタッフもきっとていねいな仕事をする人だろう。音楽がすこし過多なところがマンガチックなのかもしれない。
服について。
服は夢を与えるから、生活感なんてだせない。
すごくよくわかる。
服はそれを見たとき、まとうとき、人の中身さえも変える。
ぼくは残念ながらオトコなので、高まる機会が圧倒的にすくないけど。
新しいものばかりを追い求め、去年の服は全部捨てちゃう的な生き方と、
その時々の身体に合わせたサイズに作り直して着ていくいき方。
どちらもある。
映画は「死」にもキチンと向き合ってる。
お母さんの服を作り直す少女。それは「生きる主役」が交代することの暗示。人は死んで焼かれて、服は残る。
受け継いでいくというのは「デビュー」と「引退」のくりかえし。
消えていくものがあるから、うまれるものがある。
人を動かすのは、まわりの賞賛・激励・期待じゃなく、自らのマグマだけ。
僕が誰かに期待しても、それは叶わぬこと。
その人が燃え始めたら、誰にも止められないだろうけど。
僕もきっとそうだったはず。
僕がやりたいと思ったときにだけ、事柄は変化してゆく。
優雅で夢のようなひとときは
日の出と日没とのくりかえしから生まれる。
坂を上ったり、下ったりする描写から、そんなことを感じた。
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