東山魁夷自然と人、そして町【九州国立博物館】人がいなくなった世界に

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東山魁夷自然と人、そして町:九州国立博物館へ

東山魁夷。日本画の巨匠。湖のそばに白馬がいる絵を描いた人。
そのくらいの知識で、
特に何も興味がなかった。
妻が日本画を習っていて、大学も日本画学科だったので「行こう行こう」と言われてはみたものの。

九州国立博物館て、微妙に行きづらいんだよなぁ。
でもまあいっか。
開場前に着くように出発した。

開場は9:30。着いたのは9:00。
さすがに誰もいないかな?と思ったら、一番近い駐車場は8割がた埋まってて、入り口にはかなりの人が並んでた。

入場制限をされながら、徐々に入る。

説明書きは読まないので、ずんずん進む。
つもりだった。

 

東山魁夷自然と人、そして町:優しさのかけらもない

よく東山魁夷の作品をさして

「優しい目線で描かれた風景画」などという表現を目にすることがある。

とんでもない。

 

彼には優しさのかけらもない。

描くのはただただ「人間のいない世界」

雲や、霧や、弱い太陽光線。

そこにある木々や湖、雪さえも風に揺らされ、太陽に照らされるだけのもの。

主役のように描かれた風景でさえ、自分たちでは何をすることもできず、そこにあるだけ。
木々を生かすのは「風と光」だ。

 

この絵を見てるあなたへ。
あなたは何もできないし、何者でもない。
あなたは風に吹かれ、太陽に照らされるものの中で、一番醜く、描く価値のないものだ。

 

そんな風に感じた。
これはSFだ。人がいなくなった世界だ。
そして、どこまでもそのままの世界だ。

p07

 

東山魁夷自然と人、そして町:圧倒的な情報量に脳がダウン

作品一枚一枚に込められた情報量が恐ろしく多い。
見ていると木々の一本一本がざわざわと音を立て始め、霧は絵から流れてきて、
自然に襲われる感覚になる。

絵の浸透力がすごく高く、どんどん頭に入り込んでくる。

どの絵にも、一箇所だけピントが不自然にあっているところがあり、そのものが話しかける。

「俺は、見てるよ。あんたを」

見たことのない色の洪水が、キラキラと輝くこなで描かれた白の裏の極彩色が襲ってくる。

夕日の赤は見てると発熱しそうだ。
僕の「ATフィールド」を突き破って、東山魁夷の絵は僕を襲う。

脳が情報を処理できなくて、激しく頭痛がする。

 

僕らは絵を鑑賞してるつもりが、絵から鑑賞されている。
絵は僕らをじっと見て、じわりと動き出す。

p05

 

東山魁夷自然と人、そして町:有名な白馬の絵は、箸休め

湖畔の白馬の連作が、唯一「力の抜けた」作品だった。
言ってみれば一番面白みに欠けた。

中盤でかなりの疲労があったところに、大きな海の絵の連作「唐招提寺御影堂障壁画」があった。

周りを波で囲まれる。
さっきまではじりじりと攻めてきた自然が、大きなうねりで襲いかかる。
水の中にいるように息が苦しくなる。
波の音が聞こえ、しぶきを感じる。

恐ろしい。
恐ろしいまでの「東山魁夷の脳内リアル」

水墨画もそうだ。
今まで見た水墨画はなんだったのか?

生き物のように動く墨絵。柔らかく生命力にあふれてる。

 

ものすごい。

 

この大きな作品に命を吹き込みながら、東山魁夷は何を考えていたんだ?
この人は、一体何者なんだ。

 

戦争で死を覚悟したのち、助かって。
どうせなら好きだった絵をもう一度、というスタートだったらしい。

p06

 

東山魁夷自然と人、そして町:彼の望んだ世界は??

人がいない世界。
争いのない世界。
主義主張のない世界。
ただただ、太陽と風が支配する世界。

 

途中のいかにもヨーロッパ旅行楽しい〜ていう感じの作品群はあるけれど、
初期の頃から、モチーフは変わり、画風も多少ふr幅があるけれど。

東山魁夷は「彼の中のリアル」だけを描く。
計算され、整理し尽くされた裸木の枝々も
遠くに消える山陰も、水面に映る森も、本物じゃない。リアリティとは違う。
彼の脳内にしかない風景。

醜い人間のいない風景。

p13

 

僕は東山魁夷を知らなかった。
そして今日、東山魁夷を知った。
経歴も何も知らないが、自分に見える世界にのみ生き、その世界を記録し続けた画家。言い方を変えれば「狂気に満ちた脳内ワールド」を圧倒的な力と集中力で書き続けた天才。

 

残念ながら、福岡での東山魁夷展はもう終わる。(2016年8月28日)

見終わって12時間近く経ったのに、まだ体に、脳にダメージがある。

 

ものすごい。

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