僕の名前はズッキーニ:感想【我慢が美徳な日本とは真逆なフランスのアニメーション】満足度100%の意味がわかる

 

僕の名前はズッキーニ:まさに宝物のような映画

いつも屋根裏部屋でひとりで絵を描いて遊んでいる少年イカール(ズッキーニ)は、ママと二人暮らし。
とは言ってもママはビールを飲んでばかり。パパが“若い雌鳥(女性)”が大好きで、出て行ってからずっと。
部屋の窓からタコをあげたり、床に散らばったビールの缶を集めてタワーを作って遊ぶ毎日。
ある時ズッキーニが開けたドアの生でママは不慮の事故に遭い死んでしまう。

事故を担当した警察官のレイモンに孤児院「フォンテーヌ園」に連れていかれたズッキーニ。
クラスメイトは、リーダー格のシモン、アメッド、ジュジュブ、アリス、ベアトリスの5人。それぞれに複雑な事情を抱えながら園生活を送っている。

「皆、同じさ。誰にも愛されていない」

最初は新人いじりをされるんだけど、同じ心の傷を持つもの同士、だんだん打ち解けていく。

身寄りのない子供たち。
家庭に問題があり、親に別に暮らす子供達。

世界中にある不幸な話をこの映画は暖かく、深く、さらりと描く。
無理な設定も、お涙頂戴も、耐えて忍んで生き抜くこともない。
くだらない感動がない。
丁寧な動きと、感情を呼び覚ます人形たちの表情しかない。
無意味に盛り上げる音楽も、話題のイケメンも、制服もない。

環境や身の上はともかく、意思が尊重され、人生を楽しむ権利があり、他人を羨む権利があり、慈しむ権利がある。
義務と権利がセットではなく、まずは権利が保障される。

 

僕の名前はズッキーニ:人生を楽しもうじゃないか

これは最近よく言われる「楽しんだもん勝ち」なんていうくだらない言葉じゃない。
どんな境遇であれ子供は親とは別人格で守られる権利があり、楽しみを見つけて実行する権利がある。

孤児院での生活。
みんなで雪山を見にいく。
そこで夜はエレクトロダンスミュージックで踊るんだ。引率の先生のDJで。
キラキラのミラーボールの下で。

想い想いのダンスを。

 

人生は想い想いのダンスだ。誰もが自分ひとりで踊り始める。そしてダンスの相手を見つける。
ズッキーニにとってダンスの相手は、新しい入園者「カミーユ」だ。二人は意気投合。

もちろん園内にはジェラシーも起きる。
でもカミーユの叔母が、扶養手当欲しさに姪を引き取ると園に乗り込んで来るとある作戦を仕掛けたりする。

本当にかわいい。ムダがない。

 

僕の名前はズッキーニ:おちんちんが爆発する!

就寝時間を過ぎた子供達の話題は下ネタ。
知ったかぶりで話すやつ。それを聞いて想像が膨らみすぎるやつ。
いろんな子供がいた。僕らもそうだった、よね。

女はいいわいいいわと言い、男のおちんちんが爆発する!
サイコーだ。

こんなシーンがあるからリアリティがあるんよね。映画に。

 

孤児院の職員に子供が生まれる。
生命の誕生。
同時にこの子は「きちんと親を持った子供」で、僕らとは違う。
その違いを感じる子供達の一言一言が鋭くて素敵。

 

僕の名前はズッキーニ:アフレコはマイクの前でなく

当然、日本語吹き替え版が話題になるだろうし、そちらを見る人が多いだろう。
ま、ご勝手にという気持ちにしかならない(笑)

この映画のアフレコのメイキングがあった。これを見て欲しい。

丁寧にものを作るってのはこういうことだ。

言葉を超えて、ニュアンスが響いてくる。目の動き、口の動き。
全てに意味があり、関連がある。

この監督は長編初らしい。
ストップモーションアニメーションは時間もお金も莫大にかかると思う。
ヒットの実績のない監督に、世界的ベストセラーでもない本の脚色作品を撮らせてくれる。

 

僕の名前はズッキーニ:エンドロールでさらに格が上がる映画

エンドロールはとても重要。
物語を終わらせるんだから。

誰もがハッピーエンド!という終わり方ではなく、見た人はそれぞれモヤモヤを抱くお話。
その感情のゆらぎを空から見るような歌はSophie Hunger の歌う Le Vent nous porteraという歌。

このうたに圧倒された。

「風が僕たちを運ぶよ」と繰り返されるんだけど、

〜人生うまくいかないときは「腰のくびれ」だと思えばいい〜

こんなに美しくてユーモアがあって官能的な歌が世界にはあるんだ。
ポジティブな可能性もネガティヴな可能性も持ったまま人生は進んでいくよ。

人生は不公平だ。
それを突きつけながらも、楽しむことを求める権利の輝きを描く。
本当に素晴らしい映画。

 

【705号室】映画見聞録~映画が大好き~2018





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