わたしを離さないで:総論【ドラマと映画の違い】

「わたしを離さないで」は映画とお芝居、ドラマがある。

映画ばかり見ている僕は「2時間」という流れの中でストーリーが展開、完結するのに慣れている。
観終わったら、終わり。濃密なエキスのような2時間。ぶっとうしの快楽。

それに対して連続ドラマは普通、一週間に一度放映。次の回まで一週間空く。その間にいろんな事を考えたり、他の人の批評を呼んだりする楽しみがある。いろんな人が違う見方をするのを観るのは楽しい。

毎回いろんな山場や、そうでもないシーンがあるし。

 

「わたしを離さないで」というベストセラー小説からの「映画化」「ドラマ化」されたものをみた。

原作の小説はチラッと読んだけど「文体」が好みじゃなくて読まなかった。作者の文章か、役者の文章か、それとも印刷された文字や紙のせいかはわからない。

 

「わたしを離さないで」映画とドラマの舞台は同じだけど質感は違う

物語の舞台は現代より、すこし前。
人類の寿命は医療の発展により飛躍的に伸びている。
それは新鮮で健康な「臓器を提供する者」の存在なくしてはありえない。
私たちは生き延びるために細胞からクローンを作り、病気や怪我で失った部品をそのクローンからもらいながら生きていく。
生まれながらにして「命をささげる運命」をもった「人間ではない」クローンたちが、生死の間でのたうつ物語。

 

わたしを離さないで映画版で描かれるのは「虚無」

映画は主人公三人のうちの二人に焦点をあてて進む。さらりとした印象。

ドラマはドラマチックな音楽と、よせては返す波のアップが印象的だったけど、こちらは砂浜で座って話す感じ。遠くに「未来への希望(の残骸)」を望みながら。海鳴りを聞きながら。世界の外側にいる印象。

 

自由に生きることができる僕たちと自由のない提供者の命もおなじ。この世界で平等なのは「生きている時間がある」ということだけ。
その時間をどう使い、どんな思い出をかさねていけるか?

さすがに出演者は外人さん。絵画のように美しい風景にぴったり。
感情的になりすぎない印象があるのは、耳に入る言葉が英語だからかも。

静かな、静かな映画。寝不足のときにみたら眠っちゃうかも。

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わたしを離さないでドラマで描かれるのは美和の「執着」

1時間ドラマで10本。個々の感想は以下に記すとして。

全体通して言えるのは、映画では省かれていた第三の女(ドラマでは美和)の物語だった。

  • 美和の失望
  • 美和の執着
  • 美和の恐れ
  • 美和のいらだち

人してもっていて普通な「感情」を爆発させるクローン。望み、断ち切られ、また望む。怒り、恐し、後悔する。
主人公二人には関係性がある。自然に生まれた関係性。口に出すか、成就したかは別。
第三の女「美和」は、関係性から作らなければならなかった。

 

日々を生きていくうえで「明日も生きよう」とする気持ちは「他社との関係性」から生まれるのではないだろうか。

それは手にした者にとっては自然でたやすいことだけど、望んでも望んでも関係性を手に入れられないものもいる。それが美和だったのかも。

 

美和は恭子を欲しがり、恭子になろうとし、恭子を傷つける。傷つけることでしか関係性を作れないから。
美和が自分から離れて行く要因はすべて排除する。欲しいものはただひとつだから。
美和が恭子を手に入れられないと思ったのはタクシーの中の「恭子と友彦の握り合う手を見たから」かも。
それでも美和は恭子を手に入れたかったんじゃ?自分のほうが先に死にゆくことを知ってたから。
何かをつかもうとしたその手は、恭子をつかんで離さない。

 

「わたしを離さないで」

 

このセリフを美和は恭子に、恭子は友彦にいう。

でも、より深く捕まえて離さないのは美和の言葉のように思えた。恭子と友彦は美和の残した「希望のしっぽ」を探しもとめ、さらに絶望するのだから。
そういうエゴイスティックな解釈のしかたはどうだろうか。
自分は死んでも「あなたを離さない」という思い。

わたしを離さないで

 

 

わたしを離さないでドラマでもクローンの人権について多く語られる。

「目をつぶられるべき存在」「おおっぴらにその事を口に出せない存在」心の底ではクローンの命を奪い自分たちが生き、幸せを手にしているということがわかっていても、誰もそれを止めようとはしない。

この状況がいまの日本にそっくり。世界にそっくり。3.11以後の僕ら。

2016年の冬から春にかけてこのドラマが放送されたことには深い意味がある気がする。そしてそれを一部の人(少数派視聴者)しか確認できなかったということも。

 

生まれたものが持つ「人権」。
なぜ、生まれたものにはそんなギフトが与えられるのだろう?

生まれることは試練だから。

生き延びることは試練だから。だから幸福を追い求めるという「生きる動機」を尊ぶ。幸福の追求は「公共の福祉に反しなければ最優先される」。

ところが、部品としてうまれたクローンたちが「私たちに生きる権利を!」といい始めたらどうなる?病気や怪我は回復しない。寿命はのびない。つまり「公共の福祉に反する」ことになる。

 

公共とはマジョリティだ。
マイノリティーは認められない。
マジョリティの「幸福の追求」を守るためには。

 

 

わたしを離さないでドラマ:三浦春馬と水川あさみのものすごい気迫。

ドラマをちゃんと見たことがなかった僕には、三浦春馬と水川あさみの印象は薄かった。綾瀬はるかはコメディエンヌの才能と、「海街diary」で見た苛立ちが好印象だったけど。

「わたしを離さないで」を観て、三浦春馬と水川あさみの演技が見れたことが一番の収穫だった。

前半の水川あさみの粘着と演技してる演技。ああ、みてるほとんとイライラする。こんなやつ嫌い!ていうところからスタートして、人間のもつ不均衡な感情とか、適当な事言ってやり過ごす感じとか、どこの職場にもいるような「人間臭さ」に変化し、さらにそれが死を前にした後悔と絶望、逆上で視聴者を泣かす。

長いものがたりを語れる「連続ドラマの特性」を生かした三段変化。
もう本当に素晴らしい。

 

三浦春馬。ただのきれいな顔のぼっちゃんと思ってた。佐藤健などと同期な感じだけど、何歩も先に行かれた感がある。まあ、進撃の巨人くらいしかみたことなかったから「そんなもんだろう」と思っていた。

でも違った。

物語を分析して研究して、子供時代のキャラクターがそのまま大きくなったかのような演技。表面の演技だけじゃなく、心が筋肉を動かし、血も肉もある表情での演技。

感情を殺すとき。感情を爆発させるとき。からっぽなとき。
どれもキチンと筋の通った演技。
役者エゴのない演技。

ぞっとした。こんなにうまかったらこの後いろいろやばいんじゃ?と妻と話した。

どんな役者も「自分にあった役」をあてがわれ、それをうまく乗りこなす。
僕が見た三浦春馬は違った。
役者は媒介。物語のコマ。だけど楽な嘘はすぐばれる。物語を壊してしまう。だから全てをなげうって、役になる。コマになる。

そんな気概を感じた。
どうか彼にすばらしい作品をお願いします。

タイトル

 

わたしを離さないで:映画とドラマのスポットライト

原作=映画=ドラマ
ではないことは間違いない。

 

それぞれにスポットを当てたいところは違うだろう。
それが原作モノの面白いところなのかも。
原作に敬意を表しながら、作り手としてアレンジする。それも多くのヒット曲のように「原曲のほうがいい!」て言われることがわかっていても。

作り手ってのはそんなものかもしれないね。

 

 

ただ、やっぱりオリジナル脚本の映画やドラマを見たいな~とも思う。

誰もが知ってるその話より、作家の頭の中でうごめいてる話をみたいな。

 

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